人命か事業か、新型インフルで問われる新たなBCP

 人から人へ感染する新型インフルエンザへの対応が迫られている。いったん発生すると瞬く間に世界的流行(パンデミック)を引き起こすと考えられており、日本政府は人口の4分の1が感染すると仮定して対策を講じている。
 企業も多数の社員の欠勤を免れず、事業継続に困難を来たす。地震とは違い、広い地域で長期間、被害が続くため、連鎖的な倒産も招きかねない。このリスクに対応するには従来の事業継続計画(BCP)を見直す必要がある。では、どのように考えていくべきか。リスクコンサルティングの専門家に聞いた。

文/吉村克己
2008年10月30日

 今年1月、NHKは「シリーズ 最強ウイルス」と題して、ドラマと調査報告によって2夜にわたり新型インフルエンザの危険性を訴えた。その反響は大きく、新型インフルエンザが社会にどれほどの打撃を与えるかを知らしめた。

 企業に対するリスクマネジメントサービスを提供する東京海上日動リスクコンサルティングの亀崎洋グループリーダー(BCMコンサルティング第二グループ)は「この番組をきっかけに新型インフルエンザへの危機意識が高まりました」と語る。

亀崎洋氏

亀崎洋氏

「昨年までは地震を想定したBCP(事業継続計画)が提供するサービスの中心でしたが、今年の1月以降、新型インフルエンザ対策の相談が増えました。もちろん地震版BCPは必要ですし、新型インフルエンザに対しても応用が利きますが、大地震の発生が懸念される静岡や愛知の企業の意識が高いのに対して、九州や北海道、中国地方の企業は余り切迫感がなく、BCPの空白地帯になる恐れがありました。その点、新型インフルエンザの被害は全国に広がる恐れがありますので、どの地域の企業も社員の感染予防とBCPが必要となります」

 同様にリスクマネジメントサービスを行うインターリスク総研(三井住友海上グループ)の小林誠部長(研究開発部)も「これまでBCPが地震対策になってしまっていた現状が、新型インフルエンザの危機によって、BCP本来の姿に戻るでしょう」と言う。

小林誠氏

小林誠氏

 「日本における現在のBCPはシナリオを想定してから計画を作るが、地震や停電など原因から考えて導入すると使いづらいものになる。特に巨大なリスクに対して、海外ではBCPは細部を決めずに、トップの意思決定支援のためのツールとして使われています。
 例えば小松左京氏の小説『首都消失』のように、いきなり正体不明の雲に覆われて外部との連絡が途絶したらどうなるかと考えればいいでしょう。事業所や本社、工場が人間や物の出入りはおろか通信もできないとなったら、どうするか。原因主義ではなく、結果主義で考えるのがBCPの基本です。
 新型インフルエンザはまさにこうした巨大なリスクであり、トップがいかに早く的確に意思決定できるか、その情報流通をどう構築するかが最大の課題です」

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