速報を効果的にするための対策
緊急地震速報を効果的なものにするには、なるべく早い時点で誤差の少ない情報が得られるようにする必要がある。
その対策について、説明していこう。
1.地震観測網を密にする
藤縄 幸雄氏
もっとも効果的な対策は、地震計の数を増やすことである。現在、緊急地震速報に使われているのは、気象庁の地震計約200と防災科研の約800、合わせて全国で約1000カ所にあり、約20km間隔に設置されている。これを10km間隔、あるいは5km間隔にすることで、誤報を減らし、精度を上げることができる。それによって揺れが到達するまでの余裕時間も増やすことが可能になる。問題は1カ所3000万円程度かかる地震計設置の予算をどうするかである。
一方、日本で起きる被害地震の7割以上が海底を震源とすることから、海底地震計を増設することも重要な課題である。現在、海底地震計の割合は全体の2~3%に過ぎない。
海底地震計1台を設置する費用は、陸上の約10倍にあたる3億円程度かかるのがネックとなっている。
高いか安いかであるが、例えば東海・東南海地震が起きた場合、最悪のシナリオでは被害額が80兆円に達するとされていることを考えていただきたい。取り急ぎ必要とされる海底地震計の設置費用は、全国で2000億円ほどである。あとは、被害想定額と投資額のバランスをどう考えるかにかかっている。
2.データ伝送時間を短くする
余裕時間を左右する今一つの要素に、データの伝送時間がある。もっとも高いレベルの専用回線を使うと0.2秒でデータが伝送でき、これが理想的といえる。ただし、すべての回線をこの専用回線にするには費用がかかりすぎる。
現在、800点のデータを収集している防災科研の高感度地震観測網Hi-net(ハイネット)では、1.5秒かかる。しかし、データを送るパケットを、現在の1秒単位から0.1秒単位にすることで、情報伝達時間を現在よりも1秒近く短縮することが可能になる。1秒が生死の分かれ目となる場合もある地震災害の軽減のためには、この程度の費用負担をす価値は十分にあると考える。
3.地中深くに地震計を設置する
震源に少しでも近い大深度に地震計を置くことで、速報の到達時間を短縮することが可能になる。現在、首都圏では、3,000mクラスの深部観測井が4本あるが、これを5キロ間隔に100本設置することで、情報伝達時間を4秒ほど短縮できる。
この短縮効果は「非常に大きい」といっていいだろう。例えば、原子力発電所の原子炉を停止させるために制御棒を入れるには2秒あればいいと聞いている。人間でも、1秒あれば身を守るべく意識を集中できるものだ。予想される首都圏直下型地震では、最も悪い状況で110兆円以上の被害とも言われていることを考えれば、このアイデアは十分考慮に価するのではないか。
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