進化する「緊急地震速報」

一般利用者向け緊急地震速報の速報が揺れに間にあわなかった理由

 では、今年7月24日の深夜に発生した岩手沿岸北部を震源とする地震を例にとって説明しよう。マグニチュード6.8を記録し、最大震度は6強の地震である。

 地震であると検知したのは、0時26分35秒。気象庁の地震計のうち2点で揺れを検知すると、地震だと判断するアルゴリズムになっている。地震以外の揺れと判別するためである。

 しかし、そのまま第1報が出るわけではなく、第1報がでたのは4.1秒後であった。誤報を出さないために、何点かの揺れをもとに計算するためである。

 高度利用者向けシステムを使っているユーザーには、この時点で震度や余裕時間の推定値が示された。

 一方、テレビやラジオで緊急地震速報が流されたのは20秒後であり、第6報をもとにしたものだった。残念ながら、震源に近い地域では、すでに揺れている状態で速報に接したことになる。ただし、震源から遠い首都圏では十分に間にあった。

一般利用者向け緊急地震速報 これは、2008年5月8日に発生した茨城県沖を震源とした地震の例。震度5弱と判断されたのは、岩手沿岸北部の地震よりもさらに遅い60秒後。第1~8報の予測では震度5弱に達しなかったために、テレビ・ラジオに情報が流れなかった。

 それにしても、20秒後、60秒後というのは遅すぎるといわれても、仕方がないところである。

 最初からマグニチュード6.9という値が予測されていれば、もっと早くテレビやラジオでも速報が出たはずである。だが、地震発生直後の最初の予測値ではマグニチュード5.8という小さいものであり、それでは最大震度5弱には達しないと推定され、20秒後、60秒後までは、設定のとおり情報が出されなかったのだ。

 しかし、時間がたつにつれてマグニチュードの推定値が大きくなり、そこで初めて一般利用者向け緊急地震速報に情報が出されたというわけである。

 この地震は震源が深かったために、地表に揺れが伝わるまでに比較的時間がかかった。そのため、第1報の段階で速報が伝わる高度利用者向けシステムでは、ほとんどの地域で、揺れの前に情報が入っていた。

 だが、一般向け情報は、上記のような理由によって、震源近くでは間に合わなかったのである。現時点では、誤報を防ぐためにはやむを得ない措置であり、これだけ見て「役に立たない」と断じていただきたくないのである。一般利用者向け情報は、テレビ・ラジオさえあって、電源が入っていれば、特別の経費なしで利用できるメリットもあることから、2種類の情報を上手に使い分けるのが賢明な選択であろう。

 もちろん、このままでいいとは思われていない。少しでも正確で素早い速報が出せるよう、さまざまな対策が進められているところだ。

 一方、高度利用情報の場合は、素早く通報されるものの誤報がゼロではない。当初に比べて信頼度がどんどん向上しており、現在では誤報発生が1%以内にとどまっている。この確率をさらに少なくしていくことが今後の課題である。

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