進化する「緊急地震速報」

 ここ2、3年、全国各地で大きな被害をともなう地震が続くなか、揺れが到達する前に震度や余裕時間を知らせる「緊急地震速報」に対する関心が高まっている。そこで、「緊急地震速報について」と題した、特定非営利活動法人リアルタイム地震情報利用協議会(以下REIC)の藤縄幸雄(ふじなわ・ゆきお)氏の講演を紹介しよう。本講演は2008年7月23、24日の両日、東京・中央区のNTT茅場兜ビル・コミュニティプラザ人形町において開催された、『事業継続対策(BCP)セミナー』(主催:NTT東日本-東京中央、協力:事業継続対策コンソーシアム)の一部である。
  一部には、速報の効果に対して疑問を持つ向きもあるが、まずその誤解をとくために、藤縄氏は緊急地震速報に2つの種類があることを説明。そして、緊急地震速報は普及がはじまったばかりの段階であり、今後の取り組みによって、さらに早くさらに正確な速報が可能になると指摘する。

文/二村 高史、写真/新関 雅士
2008年10月2日

 地震波には大きく分けて、初期微動と言われるP波と大きな揺れを引き起こすS波がある。P波の速度はS波よりも速いため、S波がやってくる前にP波を震源近くで検知し、地震の規模や位置の情報を的確に伝達するシステムができれば、大きな揺れが起きる前に対策を実行することができる。

 そうした発想のもとに開発が進められてきたのが、緊急地震速報である。

緊急地震速報を利用したシステムが実用化されつつある

藤縄 幸雄氏

藤縄 幸雄氏

 日本全国にある地震観測網を利用し、そのデータを素早く収集して必要な情報をつくり、発信するという事業は、昨年の10月より既に国レベルで行われており、気象庁が運用してきた。

 しかし、地震の被害を食い止めるには、ただ情報を出すだけでは不十分だ。大切なのはその情報の活用方法である。緊急地震速報(高度利用者向け)を受け取ると同時に、エレベーターを減速・停止させたり、工場内の危険な作業を停止したりするシステムがあれば、余裕時間が短くとも地震による被害を減らすことができる。

 そこで、特定非営利活動法人リアルタイム地震情報利用協議会では、防災科学技術研究所(以下防災科研)から委託を受け、消防、学校、工場、集合住宅、一般家庭などで利用できるシステムを、これまでに14種類開発。民間の力を借りることで、そのうちの11種を製品化した。一例を挙げれば、家庭におけるアラーム発報、ホテルにおけるエレベーター閉じ込め対策、屋外作業をする人のための危険回避などである。

 そして、昨年10月1日から、テレビ、ラジオにおける一般利用者向けの緊急地震速報の放送が始まった。すでに、「○秒後に震度○程度の地震が起きます」という放送を、テレビ、ラジオで見聞きした方もいらっしゃるだろう。おそらく、大半の方にとって緊急地震速報イコール、テレビ、ラジオによる一般利用者向けの速報ではないかと思う。

 だが、残念なことに、そこに緊急地震速報に対する誤解の原因があるのも事実である。実際に、緊急地震速報が放送されたときには、既に揺れた後だったということも少なくない。そうした報道がされるたびに、「これでは、まったく役に立たないではないか」という非難を浴びるわけである。

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