特集:
災害時に、必要な備えとは?
『第3回 全国民放ラジオ101社パーソナリティ地震体験フォーラム』
「体験」と「正しい知識」の必要性を、ラジオから受信する

 8月27日、日比谷公園と東京プレスセンタービル(ともに東京都千代田区)で、『第3回 全国民放ラジオ101社パーソナリティ地震体験フォーラム』(社団法人日本損害保険協会と社団法人日本民間放送連盟・ラジオ委員会の共催)が開催された。このフォーラムの様子をレポートするとともに、今回は、危惧される大型地震に備えて「必要なものとは何か」について改めて考える。

文/佐々木紀行、写真/脇田裕美子
2005年9月1日

体験しておくことの大切

 当日は東京消防庁の協力のもと、日比谷公園には地震の揺れを模擬体験できる起震車や応急救護体験のブースが設置され、全国から集まった各ラジオ局のパーソナリティがこれらを実際に体験。災害時、重要なメディアの一つであるラジオの役割について改めて考えるとともに、彼らが実感した「災害時の備え」の必要性を、ラジオを通して多くの人に発信していこう、というのがこのフォーラムの目的だ。

 日本民間放送連盟・ラジオ委員長(文化放送社長)佐藤重喜氏の「地震発生時に多くの方々の助けとなるラジオと保険を、共に啓蒙していこう」という開会の挨拶でフォーラムは始まった。挨拶のあと、各パーソナリティは会場に用意された様々なブースを回り、起震車や消化訓練などを体験。事前に体験しておくことの重要性を再確認した。

 まずは、会場に用意されたブースについて紹介する。

(1)地震体験

起震車体験ブースの様子

 ブースの中で最も目を引いていたのは、震度5~7の地震体験ができる起震車である。「震度5強程度で家具が転倒し始めます。人が立っていられなくなるのは、震度6強程度からですが、多くの人が身の安全を確保しようとするのは震度5弱からです。震度7となると、自分の意思では行動できないばかりか、室内の家具が飛んでくることもあるため大変危険です」(東京消防庁)。





会場に展示されていた家具転倒防止用品

 地震に備えて家具を固定しておくということは、命の問題に関わってくる。今回の起震車体験でも、多くの体験者は揺れが生じた際、とっさにテーブルの下に隠れていた。しかし、「起震車ではテーブルが固定されているので、つかまることが可能です。しかし、多くの家庭では、テーブルが固定されていないのが現状です。震度7クラスの地震が発生した場合に備えて、つかまったり身を隠せる場所を確保しておくことや、家具の転倒を防止する処置をしておくことは大切です」(東京消防庁)。地震時による負傷原因は、家具類の転倒・落下物が圧倒的に多い。会場には様々な家具転倒防止用品も展示され、参加者の多くがこれらに関心を寄せていた。

参考:東京消防庁広報資料
新潟中越地震:平成16年10月23日(本震)
データは、長岡・小千谷地域で救急搬送された216名の負傷原因
宮城県北部の地震:平成15年7月26日
データは、全負傷者のうち597名の負傷原因

震度階級表(『ラジオフォーラム』配布資料より)

(2)煙体験

煙体験ブースの様子

 煙の恐怖というのは、普段の生活ではなかなか実感できない。地震の二次災害として起こる火事に対する備えとして、今回用意されたのが『煙ハウス』である。煙が充満した特設テントの中を、少し入り組んだ通路に沿って歩くというもので、入口から出口までの距離は、ほんの数メートルである。しかし、一歩入ると、テント内の視界はゼロである。足元はおろか、前を歩く人の姿すら分からなくなるため、急激に不安感が増す。

 煙で視界が遮られた状況というのは、想像以上に恐怖を感じることが分かったが、東京消防庁の職員は「今回使用しているのは、無害な白煙です。しかし、実際の火事の際には、あらゆるものが燃えることで発生する有害な黒煙が視界をさえぎるため、パニックに陥りやすくなるはずです」と語る。煙の恐怖とともに、地震の際、火の始末がいかに重要かを思い知らされるブースであった。

(3)消化体験

 火災発生時には、消火活動も重要な問題だ。しかし、消火器を見たことがあっても、正しく使用できる人は一体どれくらいいるだろうか? 実際使用するにあたっての手順とは、(1)安全ピンを抜く(2)ホースを外し火元に向ける(3)レバーを強く握って噴射する、の3つであるが、「消火器の使い方は、意外と知らない人が多いといえます。また、知っているだけでは、有事の際慌ててしまって、うまく扱えないことも多いので、機会があれば一度消化訓練を体験しておくとよいでしょう」と東京消防庁の職員は語る。

煙体験ブースの様子

 「火事の際に大切なのは、まず大声で火事を周りに知らせることです。また、熱や炎を避けるために、消火器を持つ姿勢はなるべく低くするようにしましょう。いざという時にきちんと使えるよう、日ごろから消火器に異常はないか調べておくことも大切です。チェックのポイントとしては、『安全ピンはついているか』『キャップはゆるんでいないか』『容器にサビや変形などはないか』『ホースに詰まりやひび割れはないか』『(圧力ゲージのついているものは)圧力を示す針が規定値内(緑色の範囲)にあるか』といったことが挙げられます」(東京都消防庁)。

 備えてあっても、いざという時に使えないのでは困る。消化訓練を一度行ったから、と安心せず、消火機器の点検も日ごろからしっかり行っておくことが大切だ。

(4)応急救護体験

応急救護体験ブースの様子

 AED(Automated External Defibrillator:自動体外式除細動器)とは、いわゆる『電気ショック』による治療を行う装置である。従来は、医師や救命士などしか使用を認められていなかったが、2004年7月からは、一般人でもAEDによる蘇生を試みることが可能となった。人工呼吸や心臓マッサージは、応急手当の方法としてよく知られているが、この方法では、リズムを失った心臓の動きを正常に戻すことはできない。酸素を全身へ運ぶ血液の流れを、一刻も早く再開させるために必要となってくるのが、AEDによる心臓への電気ショックである。

 応急救護体験ブースでは、人形を使ったAED体験を行っていた。「使い方は、音声ガイドに従って行えばいいので、難しくはありません。しかし、一度でもこの機器を扱った経験があると、実際に使用することになっても、落ち着いて扱うことができるようになります。東京消防庁では、AEDの使用方法以外にも、様々な応急手当の講習を定期的に行っています。講習のスケジュールや内容については、ホームページを参照するか、最寄りの消防署に問い合わせてください」(東京消防庁)。

 この他にも、角材などの切断を行う『救出体験』や『110番通報体験』などのブースも設けられ、いざという時の対応を東京消防庁の職員が丁寧に説明を行っていた。

 器具や装置を一度でも使っておけば、その体験の記憶は残るため、いざという時に落ち着いた行動が取れる。また、協力して応急処置や救出活動に当たれば効率も上がる。各ブースに配置された東京消防庁の職員たちが、そろって口にした「体験しておくこと、一人で対処しようとしないことが大切」という言葉は非常に印象的であった。

会場の様子 会場の様子

会場の様子

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