連載企画「水害の世紀(4)」 地域の「共助」と行政の「公助」を引き出す
【PART5】
被災者を救援、暮らしを支援
被害状況の把握や被災者の衣食住の確保、救援物資の調達や配分、被災者からの相談受け付けなど、被災後の行政は膨大な作業に追われる。自治体職員の多くは通常業務を離れて、被災者への救援・支援に奔走する。傷病者への緊急対応や資機材・薬剤の調達などにあたり、高齢者や障害のある人の援護にも動く。
避難後の衣食住の確保と傷病者への対応を急ぐ
水害に襲われた自治体では、災害対策本部が全体の被害状況の把握に努め、その対応を的確かつ迅速にできるよう、指揮する。特に被災者の安全と衣食住の確保は急務で、例えば、避難所に職員を派遣し、被災者の受け入れ態勢を整え、運営にあたる。避難所に集まった人の多くは、ずぶ濡れで着の身着のまま。職員は避難者の人数を確認して水や食料、毛布などを調達する。
また、臨時の救護所などを設けて、傷病者への緊急対応や資機材・薬剤の調達などにあたり、高齢者や障害のある人の援護にも動く。
長引く避難生活には被災者の心と体のケアが必要
避難生活が長引くにつれ、被災者の健康や衛生面での配慮、心のケアが必要になる。2004年7月の新潟・福島豪雨で被災した新潟県三条市では、被災者の不安を少しでも軽くするため、「災害復興ニュース」を2~3日おきに発行し、「どこで何が得られるか」といった情報を提供した。また、炊き出しは、延べ93日間、約70万5700食に及び、給水車の用意や入浴施設の紹介、相談窓口の開設、応急仮設住宅の設置などにも取り組んでいる。
水が引いた後には消毒の徹底で感染症を予防
浸水被害は、水につかっている時間が少ないほど軽減できる。そのため、被害の大きな地域では排水ポンプによる排水が必要になる。
「水が引いた後に、最優先で取り組んだのは消毒だった」と、新潟・福島豪雨で被災した新潟県見附市の清水幸雄・企画調整課課長補佐。消毒を怠ると、悪臭が残るだけでなく、感染症発生の危険が高まるからだ。見附市では石灰などを家の周囲や路面にまき、床上浸水した家には屋内用の薬剤を用意した。
全国からの応援や救援物資を取りまとめて分配
災害発生がマスコミによって報じられるや、被災地には大勢のボランティアが全国から訪れる。自治体は、社会福祉協議会やボランティア団体と連携し「災害ボランティアセンター」の設置や運営に協力する。
全国からは救援物資も届き、自治体が受け入れや振り分けの窓口になる。2004年10月の台風23号で被災した兵庫県豊岡市総務課によると、「毛布、衣類、長靴、スタミナドリンクなど、たくさんの救援物資が届いた。特にタオルの支給は住民に喜ばれ、屋内の泥ぬぐいや、壁をぬぐうのに役立った」という。
【PART6】
急げ復旧、めざせ復興
被災直後から、県や国でも河川や道路、ライフラインなどの復旧・復興に向けて動き出す。再び災害に襲われないよう、被災者が1日も早く安全な暮らしができるよう、官民が一体になって力を合わせる。
●復旧作業の最大の障害は泥とゴミの山
復旧をめざす被災地の自治体が最も頭を悩ますのが、道路上にあふれた泥やゴミ。復旧用の車両を通すには、まず路面の大量の泥を取り除き、道をふさぐ車や流木、家財道具などを処理しなくてはならない。
除去や清掃にはボランティアも協力するが、その作業中にも被災した家屋から次々と家財や畳などが運び出され、それらを集めては集積所へ運ぶことを繰り返す。
2004年10月の台風23号で被害を受けた兵庫県豊岡市では、水害で発生したゴミは約3万2000トン。ふだん集まるゴミのおよそ1年半分だ。
また、電気・ガス・水道・電話などのライフラインの障害や、学校や保育園などの復旧状況の把握も必要で、「とにかく人手が足りず、応援協定のある自治体や、申し出のあった自治体から、人員を派遣してもらった」と、見附市の清水幸雄・企画調整課課長補佐は当時を振り返る。
被害個所を緊急復旧堤防や道路の安全を図る
「公助」による復旧には、国や県の役割が大きい。堤防の決壊や護岸の崩壊、道路の陥没や橋の流失などは、放置がさらに大きな被害を招く恐れがあり、緊急な復旧作業が必要なこともある。
台風23号に襲われた兵庫県豊岡市内の円山川では、10月20日午後11時ごろに堤防が決壊した。その約1時間後には国土交通省豊岡河川国道事務所内に現地対策部を設置。21日正午には復旧作業に着手し、26日午前11時20分ごろに仮復旧を完了した。
また、交通網の途切れは復興をめざすうえで大きな障害となり、早急な取り組みが求められる。工事の進ちょく状況を把握し、公表するのも行政の役割となる。
復旧・復興情報をホームページで公開
2004年10月に発生した新潟県中越地震では、ライフラインや交通網が寸断された。復旧・復興をめざす各機関や被災者が情報を共有できるように、「WebGISによる情報配信システム」がホームページ上で公開されている(http://chuetsu-gis.nagaoka-id.ac.jp/)。京都大学防災研究所や民間企業、省庁など産学官のボランティアが協働した「新潟県中越地震復旧・復興GISプロジェクト」が2004年11月から運営を始めた。
土砂災害の発生個所や通行止めの状況、鉄道の被害・運行状況、避難状況、電気・ガス・水道・電話の状況、ボランティアセンターの状況など様々な情報が閲覧できる。
(連載企画「水害の世紀」終わり)
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