特集:
連載企画「水害の世紀(4)」
地域の「共助」と行政の「公助」を引き出す
~「自助」を支える地域の団結~

日経コンストラクション編『水害の世紀』(日経BP社発行、定価2000円)

 日経コンストラクションでは、日本で浸水被害が多発し始めた状況をとらえ、 7月11日に『水害の世紀』というタイトルの書籍を発行。2004年に日本で発生した浸水被害などの記録を、カラー写真や被災者の証言という形でとどめる。さらに一歩踏み込んで、災害発生のメカニズムや災害から身を守るためのポイントもまとめた。

 この連載企画の趣旨は、『水害の世紀』の一部分を紹介しながら、水害はどういった場所で発生する確率が高いのか、浸水被害からどうやって自分や家族の命、さらには持ち家を守っていけばいいのかを解説するものだ。

 台風のシーズンがやってきた。2004年には、観測史上最多の台風が日本列島に上陸。全国各地で浸水被害を引き起こした。今年も7月末に台風7号、8月末には台風11号がともに千葉県に上陸。台風11号では,茨城県や神奈川県などで床上浸水の被害が出た。

 水害の発生時にはまず、自分の身を自分で守る「自助」が大切――。連載の第2回目3回目では、この自助という考え方を中心に、水害を事前に察知するための情報収集法などを解説した。

 しかし、大規模な災害では、「自助」でできることには限界がある。地域住民が力を出し合う「共助」と、行政が主体となる「公助」も欠かすことはできない。

 連載の第4回は、河川の氾濫などで水害が発生した際、地域コミュニティーや行政はそれぞれどんな役割を果たしているのか。また、今後、どのような連携が求められるのか解説していこう。(日経コンストラクション編集)

監修/森野美徳 文/日経コンストラクション編集部
2005年8月31日

【PART1】
あなたを救う地域社会の結束

 被災時には、消防や警察、自衛隊などが救援・救助活動に取り組む。しかし、急を要するときや細やかな対応が求められる場面で力を発揮するのは地域社会の結束だ。地域コミュニティーの希薄化が指摘される今、住民同士に求められる防災意識や行動は何か。

被災時には近隣が運命共同体に

 「地域とのつながりの大切さは、災害時に顕著になる」と語るのは、地域防災活動の啓発に取り組む栗田暢之NPO法人レスキューストックヤード代表理事。「災害が起これば、みんなが運命共同体。そのとき隣同士が『初めまして』などとあいさつする地域は救われない」と手厳しい。

 地域社会の結束が生かせる最大の特徴は即応性だ。「阪神・淡路大震災で生き埋めになった3万5000人のうち、77%が地域住民によって助け出されている(※)。せめて隣同士やマンションの上下階ぐらいは、互いに助け合える関係を保つべきだ」と栗田代表は助言する。

※ 河田恵昭氏(京都大学防災研究所所長)の調査による

避難を誘導できるリーダーが必要

 近所の仲がよければ地域防災力が高くなるわけではない。「行政の判断を待つ前に、率先して避難を指示できるような、正確な知識を持った人が地域に一定数以上、必要」と栗田代表はリーダーの存在に言及する。

 町内会や自治会、小学校区などで自主防災組織を設立し、消防署や消防・水防団はもとより、企業や学校などと連携しながら、地域の実情に合ったオリジナルの訓練をしておくことが地域防災力の向上につながる。

 「課題はいかに無関心層に参加を訴えていくか。あきらめず、各町内でアイデアを出し合っていくしかない」と栗田代表は語る。








【PART2】
後継者不足に悩む水防団

 水防団は、水害の発生が予測される場合、応急的な堤防補強や危険地域に住む住民の避難誘導など、最前線での水防活動に取り組む。もともとは地域の地縁を中心とした自主的な組織だったが、近年は人員が不足し、各地で水防体制の弱体化が懸念されている。

危険も伴う活動はボランティア精神から

 1949年に制定された「水防法」で市町村には水防管理団体(水防団)を置くことが義務づけられた。水防団員は、消防団員とともに水防活動に従事することになっているが、水防団員のほとんどは消防団員との兼務。水防を専門に活動する団員2%ほどで、専門家の不在が問題となっている。

 水防団員は日ごろから講習会や訓練を通して水防知識と技術を高め、豪雨になると、堤防の見回りや浸水被害を防ぐための土のう積み、住民の避難誘導などにあたる。荒れた気象条件のなか、不眠不休の活動には大きな危険も伴うが、活動の手当てはごくわずか。本業は別にあり、ほとんどがボランティアだ。

後継者不足で衰える水防団の力

2004年8月の台風10号では、徳島県阿南市の那 賀川の堤防付近で漏水被害が発生。不眠不休の水防活動が続いた(写真:国土交通省)

 近年、水防団員数は、水防への意識低下と相まって全国的に減り続け、後継者の不足に悩んでいる。2003年の団員数は約94万人で、30年前から約23万人が減少した。

 さらに、会社に勤めている団員数は1965年から2.6倍に増加して全体の3分の2を占め、日中の活動への参加が困難な団員が多いのも課題になっている。

 召集・活動できる団員の不足に加えて、訓練や経験の不足、協力して水防にあたるべき住民の意識低下などもあり、地域の水防体制そのものの弱体化が危ぶまれている。

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