連載企画「水害の世紀」(3) 危機状況での情報収集と判断が生死を分ける

【PART2】
的確な避難行動が生死の分岐点に

 台風が近づいてきたり、集中豪雨が予想される際は、被害を最小限にとどめるための対策が必要。濡れて困るものを高所に移動し、危険が迫った際にはすぐ避難できるように、心と手荷物を準備する。大切なのは、それらの備えを浸水が始まる前にしておくことだ。

自宅の被害を少しでも減らし、いつでも避難できる態勢を

 台風や集中豪雨に関する注意報や警報が発表された場合には、家財道具や貴重品、食料などを家屋の高所に移動したり、防水板や砂袋などを用意したりして浸水に備える。ガラス窓は板やガムテープで補強し、飛来物などで割れたガラスの飛散防止に、内側からカーテンを引く。非常持ち出し品を取りまとめ、避難所までの安全なルートを家族で確認しあう。

 また、むやみに外出せず、河川やがけなど危険を感じる場所には近づかないことも重要だ。

ムダになれば幸い、避難行動は浸水の前に

 いよいよ危険が迫った際には、自宅を出て避難所へ向かう。屋外への避難は浸水する前が原則。避難勧告が出たら、ためらわず避難すること。避難指示は、避難勧告より事態が切迫していることを示すので、待ったなしで迅速な対応を。

 避難勧告や避難指示が発表されなくても、危険な場所にいたり、避難所まで時間がかかったりするときには早めに自主避難するなど、臨機応変な対応が求められる。

指定されている避難所は、本当に安全か確認を

 浸水後の避難は非常に危険が伴う。実際、避難中や水防作業中に屋外で犠牲になる例は多い。また、2004年は避難所自体での浸水が相次いだ。

 東洋大学の田中淳教授は、「4階の住人が地上に下りて小学校まで歩く方がよほど危ない。避難先イコール近くの小学校という図式は考え直すべきだ」と指摘する。

 ハザードマップなどを参考に、洪水時にも水没しない高さと、堤防の決壊にも耐えられる強さを持つ建物かどうかを確認したうえで、「知人宅や高層ビルなどを自分なりの避難所にするのもよい」と田中教授は語る。

土砂災害の予兆に気づいたら、自主的に避難を

 自然災害による死者の半数はがけ崩れ、土石流などの土砂災害が原因。瞬時に起こり、逃げる時間もないことが多いからだ。地域によって異なるが、一般的に1時間当たり20㎜以上、または降り始めから合計100㎜以上の雨が続いたら、がけ崩れ発生の危険が高い。

 広域的な情報からは局所的な土砂災害発生の予測が難しいため、予兆現象に気づいたら自主的に避難することも必要だ。

 最後に地下施設や屋外にいた場合、水害から身を守るためにどうすればよいか、ポイントをまとめておこう。

地下施設での危険を避けるには──

●屋外の状況に注意し、構内放送や避難の指示があれば従う

●少しでも高い場所に向かって逃げる

●エレベーターは使わない。停電で閉じ込められる危険がある

●床面積の狭い部屋ほど急激に水位が上昇するので、水圧によりドアが開かなくなる前に脱出する

屋外での危険を避けるには──

●安全な避難が可能な条件は水深が膝下まで。それ以上の場合は無理に屋外を歩かず、屋内の高所へ移動

●道路を移動する際には、ふたの外れたマンホールや側溝に転落しないよう注意。単独行動を避け、ロープで互いの体を結んだり、棒で足元を確かめたりしながら歩く

●持ち出す荷物はなるべく少なく、身軽に動けることを優先。両手が使えるリュックサックが適している

●持ち出す荷物はなるべく少なく、身軽に動けることを優先。両手が使えるリュックサックが適している素足、長靴は厳禁。ひもで締める運動靴は濡れると固く締まって脱げにくく、比較的歩きやすい

車に乗っていたときは──

●ブレーキの利きが悪くなるほか、濁流に流される危険があるので、少しでも高台に移動して車を止める

●やむなく車を放置する際は、緊急車両の通行の妨げにならないよう歩道側に駐車し、キーは付けたままに

 災害発生時には、まずは「自助」が大切だが、一人の力には限界がある。地域住民が力を出し合って助け合う「共助」、そして行政による「公助」もなくてはならないものだ。最終回では、共助と公助をどう引き出すかについて解説する。

(以下、連載企画「水害の世紀」(4)に続く。8月31日に掲載予定)

SAFETY JAPAN メール

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。