すわ地震、そのとき家づくりのプロたちは(第4回)

絶望している人が別の視点に立てる手助け

岡嶋和裕さん
(柏崎市在住)

アトリエkmk主宰。1970年生まれ。建築家に師事し、建築を学ぶ。生まれ育った東京から母方の実家のある柏崎市に移り、設計事務所を開設。新潟県建築士会柏崎支部の事務局長を務める。

 私が最初に都市災害の現場にかかわったのは、阪神大震災のときでした。2日目に現地入りしたんですが、一面の焼け野原だった。

 建物をつくっている人間としては、町が壊滅している様子を目の当たりにするというのは、本当に衝撃がありましたね。焼けたにおいや熱気がこもるなかで応急危険度判定をしましたから。

 以来、日本各地で起こる都市災害の救援活動に参加することが多くなりました。3年前の中越地震のときからは建築士会柏崎支部のスタッフとして取り組んでいます。

 今回も地震発生の30分後には市役所へ入りました。建築という職能のプロとして、やらなければならないことがありますから。

 避難所をどこに開設できるか、応急危険度判定はどう進めるか、その後の罹災判定はどうするか。もちろん、一般市民向けの住宅相談も準備しなくてはなりません。

 最初はみんな、逃げるので精いっぱい。やっとの思いでたどりついた避難所では、不安でいっぱいなんですよ。そこで、相談窓口を設けて、それをとにかく、吐き出させてあげて。

市役所に設けられている住宅相談窓口

 みなさんパニックに陥っていますから、そんなときは、こちらの情報や知識を全部出して説明しても、かえって混乱する。その場での回答はシンプルに、です。

 相手が何を求めているのか。正確に、明確に、すぐに決断をして答えを出す。それは、建築の仕事の場でも同じですよね。建て主や職人に対して回答がぶれてしまえば、相手は納得しないでしょう。

 「いまこの家にいては危険だから、すぐに避難所に行ったほうがいい」「避難所から家には戻らずに、仮設住宅へ入ったほうがいい」―そういったことを、その場で示唆していかなくちゃいけない。人の財産である住宅について判断するわけだから、シビアなんです。

 こちら側にも、うまくきちんと答えられるだけの知識とレベルが求められますよね。プロとしての説得力が問われる。ひとり1時間から1時間半くらいでおさめています。

 状況が落ち着いてくると、今度は被災した家について、応急処理でいいのか、本復旧が必要なのかという判断も必要になってくる。多くの人は、家が被害を受けてショックを受けている。家というのは家族の核なんですよ。

 ただ、私が言うのは「家という箱が壊れても、そこに込められた思い出や愛着までなくなったわけではないでしょ。だめになっちゃったわけではないんだよ」と。

 壊れても、より住みやすく直せたら、新たな価値になる。被災も、家づくりの「過程」としてとらえられるのでは、と。絶望している人に、別の視点を持ってもらう。なりたくて被災者になっている人なんか、いないですからね。

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日経ホームビルダー(2005年10月号)より

上記の記事「すわ地震、そのとき家づくりのプロたちは」は、『日経ホームビルダー』2007年10月号の調査記事「創刊100号記念 読者連続インタビュー 中越沖地震の被災地で/何を考え、どう動き、そして得たものは」から掲載したものです。
『日経ホームビルダー』は、工務店、ハウスメーカーをはじめ設計事務所、建材・設備会社などで戸建て住宅の設計、施工に携わる方々に、住宅の性能、コスト、顧客ニーズへの対応など技術や営業、経営、市場に関する最新情報やノウハウを読みやすく、わかりやすく紹介する実務情報誌です。
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