すわ地震、そのとき家づくりのプロたちは(第4回)

談話まとめ:渡辺圭彦=ライター
日経ホームビルダー
2007年10月24日

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捨てずに修理しないと耐震の技が失われる

高橋正継さん
(柏崎市在住)

高橋建築事務所社長。1948年生まれ。大工の修業をしながら鳶職の父の仕事も手伝い、基礎施工の技術も身につける。72年に独立し、高橋建築事務所を設立。柏崎・刈羽建築組合の組合長も務める。

 休みだったので、仲間と旅行に出ていました。ちょうど旅館からチェックアウトするところで、柏崎が震源だと聞いてびっくりして。携帯電話もつながらないし、あわてて車に乗ってね。

 高速は通行止めで、国道や旧道はマンホールが浮き上がっていたり、路肩が陥没していたり。15キロくらい移動するのに1時間半もかかりました。

 柏崎の市街地に近づくにつれ、倒壊した建物も見えてきて、家がどうなってるか心配でしたよ。結局、家は壁の一部に損傷が入ったくらいですんだのですが、せがれも余震が怖くて家の外で私らを待ってましたね。

 すぐ着替えてお客さんのところを回り始めました。従業員と手分けして。

 翌日には組合(柏崎・刈羽建築組合)で話し合いをして、必要なものを県連(新潟県建築組合連合会)に要請して。3年前の中越地震の経験があったので、全体に対応は早くできましたね。すぐ思いつくのは屋根にかけるためのビニールシートですよね。あと、飲料水。おにぎりは近隣のコンビニで買って。いやあ、でも緊急のときには、なかなか頭が回らないものですね。

 回ったお客さんの家は、50~60軒でしょうか、回りきるまで3日かかりましたね。うちが手掛けた建物には大きな損傷がなかったので、ひとまず安心して。

 いまは、昼間は現場を回って、夜は積算作業です。見積もりがないと助成金も利用できないもんだから、お客さんに「早く出して」とせっつかれているところです。

 12月初めには雪が降る。みなさんそれまでにめどをつけたい。こちらも必死ですよ。

 全壊ではなく大規模半壊、あるいは半壊の判定を受けた人の家も、相当に傷んでいます。ともかく寒くならんうちに住めるように、そちらへの対応がまず先ですね。

 高齢の方のなかには、「ローンを組んで建て替えるのは歳を考えると無理。でも、直すにもそれなりのお金がかかる」と悩んでおられる方もけっこういらっしゃる。こちらとしては、建物の一部を補強して、たとえ、ひと部屋だけでも倒壊しないようにして、当面住めるようにしてさしあげようと。

 ただ、最近の大工さんは木造の組み方に詳しい人ばかりでもない。壊れた家を大工さんが直せないから、ゴミになってしまう。そんなケースも多いんじゃないかな。でもそれでは耐震のノウハウが残らない。私は、建物を解体して修理するときが勉強になると思っています。

 どんな構造になっていて、地震でどう傷んだのか。現場で見ることでノウハウが増える。今後の改修にも生かされますよ。

 私は、建て替えを勧めることはめったにありません。建て主の金銭的な負担も大きくなりますしね。結果論になりますけど、耐震工法がもう少し浸透していれば、被害はこんなに大きくならなかった。

 人間は、事が起こってしまってから気づくものなんですかねえ。

 私は組合長の立場があるので、市の要請で、かれこれ30件くらい建築相談を受けました。電話だけの問い合わせだと300件ほどになります。

 数日前にも相談があったんです。伺って見ると、築7年の建物の内壁がことごとく傷んでひどい状態でした。

 図面を見ると1階と2階とが、間崩れしている。地震の縦揺れを受けたとき、2階を受ける1階の柱や壁が足りないから、力が梁にかかって、壁がはじかれてしまったようなんです。全体に耐力壁が少ない。構造材も細くて、筋交い材も90×36mm。私らが使っているのは105×45mmですからね。

 私らは経験がありますから、このスパンをもたせるにはこれくらいの寸法の材が必要だ、という感覚が身についています。地域の状況がわからんで、ただ計算上もたせればいいという設計屋さんの図面は、私らから見ると部材が細くてね、恐ろしいですよ。「ここらでは積雪が深いし、台風も来る。これでは細すぎる」と設計者にお話ししたこともあります。

 建築業者に対する一般の方の不信感が気になりますね。地震で壁が壊れて中が見えるようになったらずいぶんひどい工事だった、なんて話を耳にするんです。私が見たなかでは、筋交いの金物がろくに留まっていないような家もありました。

 私らも3年前に中越地震の被害を受けて、その後、耐震の意識は高くなりましたよ。そして今回またこれだけ大きい地震に遭ったわけですから、貴重な経験としてね、次の家づくりに生かしていかなくては。少しでもプラスに転じていきたいですよね。

 地元でこつこつやってきた業者が見直されるよう、取り組んでいくつもりです。気候風土をよく知っていて、なにかあればすぐ対応してくれる地場の工務店の大事さが、今回の地震で一般の方にも実感していただければ、と。

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