すわ地震、そのとき家づくりのプロたちは(第2回)

上物だけを中途半端に直すなんてできない

 ひととおり話を聞いたら、状況をファイルにして、緊急を要するものから順番に整理して。壊すか建て替えが必要なグループ、傾いた建物を起こして直すグループ、中の補修だけですむグループ、の三つに分けました。

 緊急を要する、いまにも道路や隣家へ倒れそうな家は、とりあえず角材を入れて支えておく。すぐに壊すことも直すこともできないから。でも、私らが施工した家には、そんな大きな問題はなかった。

 お客さんの親の家や、地元の古い建物が大変だった。ここらはみんな昔から知ってる人ばっかりだから。子どもが出ていって、じいちゃんばあちゃんふたりで住んでる、でっかい旧家。そんな家が壊れている。

 直すのか、それとも建て替えるのかって話になるのは、一段落してから。罹災証明が出ないと、補助金の額もわからない。

復興へのメッセージを書いた垂れ幕。丸山さんの会社の前に掲げてある

 お客さんにしてみれば、まったく予想外の出費になるわけだから。全壊だと300万~400万円、大規模半壊だと150万円まで出る。半壊だと30万円ちょっと。判定によって金額がかなり違うでしょ。

 解体するにもお金がかかる。運搬処理費用だけは市で持つということになったんだけど、この辺りの大きな屋敷の中には、母屋があって蔵があって納屋があって車庫もある。解体費だけで400万~500万円は要る。全壊の判定で補助金が出たとしても、解体費で足が出る。新たに建てるなんてことは、とうてい、いまは考えられねえわ。

 「農業やめるわ」っていう人も多い。農作業の機械や設備が全部壊れている。また買ってやり直そうとすりゃあ、1000万円近くは必要だから。母屋を建て替えるだけでも大変なのに。農業やる気なんか、そりゃあ起きないよね。

 家を直すにしても、まず基礎を直さないとだめなんですよ。古い家だと地盤改良なんかしてないし。上物だけを、とりあえず平らに戻すのは1000万円でできるかもしれない。でも地震がまた来たらと思うと、そんな中途半端なことは怖くてやれない。

 でも、県外から来た建築のボランティアさんたちが「この家は1500万円で直りますよ」とか無責任に言うんだ。「古い建物を壊すのはもったいないから」とか言うけど、建て主の気持ちも含めて、よく判断してあげることが必要だよ。中で住む人にしてみりゃあ、今のままじゃあ怖くてしかたないんだから。「また地震来たらどうなの」って。

 「おれが死ぬまで壊してくれるな」って、わが家を誇りにしていたばあちゃんが、「怖くていらんねえから、いいから壊してくれ」って泣くんですよ。

 そこは半壊にもなってないけど、よっぽど怖かったんだねえ。

 この辺りで大きな屋敷に老夫婦だけで住んでいる人たちには、現在の住まいはとうてい広すぎる。「もうこんな大きい家は要らない」って言うんです。維持管理するだけでも大変ですよ。

 半壊という判定を受けた人たちは、おそらく建て替えに向くんじゃないかな。そうしないと基礎も地盤も直せないから。

 でも、どうしてもそんなにお金かけられないという人も多いわけ。そこで、平屋の新築の企画を出したんです。1000万円しないで建てられる2DKの建物。地震に強い当社のパネル工法の仕様でね。デザインはともかくとして、早く積算して、すぐに出せるようにしろってスタッフの尻を叩いて。

 お客さんにしてみれば、今までのローンも残っているうえに、新規に借り入れが必要になるんで、そのあたりの金額負担も考慮しつつ、強い建物を提供する。築年数をリセットするということでも、安心してもらえるのでないかなと。

 もう何件か受注してます。まあ3年後が怖いね。仮設住宅の入居期間は2年でしょ。その間に建て替えや増改築の発注が一気に出きっちゃうわけだから。

 本来、何十年もかかって、じっくりと進んでいくはずの建て替えや増改築が、2年で終わってしまう。そのあとの仕事はどうなるのか。そんな不安が、頭の片隅にはあるね。

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