お客さんはもう「瓦葺きで」とは言わない
小屋組みさえちゃんとしておけば、一気にグシャッといくことはない、ということはわかった。うちの家の4寸5分の柱も、木材本来の粘り強さをよく発揮してくれたと思う。でも、もう昔のつくりにする気はねえからさ。耐力壁をきっちりと、とるよりないね。
うちは一度、火災で全部焼けたことがあるんだ。この家を建てる前のことでね。で心機一転だというわけで、この倒れた家を、建てたんですよ。
火災から台風から大雪から、まあほんと、ありとあらゆる災害を受けてきて、さすがにもうこれで来ねえだろうと思っていたんだけど……。天災というのはどうしようもねえさや。
でも、地震よりは火災のほうがあきらめがつくかな。なんにもなくなっちゃって、原っぱになっちゃったら、しょうがない、やるよりしょうがねえや、という気持ちになる。今度は、壊れた物が残ってるだろ、目の前に。やっぱりそれがね……。これだけ手間かけたんだがなあ、とね。
夜中、寝ようったって寝られないもんだから、庭先へ出ちゃあ、しみじみさ、つぶれたわが家に見入っちゃうね。
日中は仕事で動き回っているから気が紛れるけど、夜中になると静かでね、見ていると、つくづく……残念だなあと。思いのこもったものが残っているだけにね。
欄間、これだけは外して持ってきたんだ。新築した時からのものだったから。でもまあ、今後使うことはないけどさ。
結局、うちは査定では全壊なんですよ。でも、増築した部分は倒れずに残っているから、倒壊した母屋から完全に切り離してしまって、そこで仮住まいできるようにするか、なんてことも考えているんだ。
母屋は全壊してしまったけれど、ただ、基礎は傷んでねえと思うんだ。無筋だけど。母屋を建てたのは生コンなんてない時代。私が現場で砂利と砂とセメントを混ぜて練ったもんなんだから、質は確かなんだ。
基礎の捨てコンをはつって、鉄筋入れてベタ基礎のように打ち直して。鉄骨の梁を入れた部分もあるから、そこもうまく使って、なんとか直せないもんかなと。
先代から引き継いで、何年にもわたって手を入れてきた家だからね。このままゴミにするわけにはいかないやね。もうしばらくして、少しでも手が空いたら、少しずつでもね、直してやろうと思うのよ。
もうおそらくこの地域では、お客さんから瓦葺きの要望は出なくなるな。瓦から金属屋根に張り替える人も出てきているからねえ。
ただ、いまは震災からひと月。被災した方々も仮設住宅に移り始めた状態で、罹災証明が出始めたばかり。どうやって修復するかを考えるところまでは、まだいっていない、というのが現状ではないかな。
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日経ホームビルダー(2005年10月号)より
上記の記事「すわ地震、そのとき家づくりのプロたちは」は、『日経ホームビルダー』2007年10月号の調査記事「創刊100号記念 読者連続インタビュー 中越沖地震の被災地で/何を考え、どう動き、そして得たものは」から掲載したものです。
『日経ホームビルダー』は、工務店、ハウスメーカーをはじめ設計事務所、建材・設備会社などで戸建て住宅の設計、施工に携わる方々に、住宅の性能、コスト、顧客ニーズへの対応など技術や営業、経営、市場に関する最新情報やノウハウを読みやすく、わかりやすく紹介する実務情報誌です。
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