災害に対する初動という点で、新潟県中越沖地震は、過去に起きた地震の経験がある程度生きた。自治体や自衛隊などの対応はすばやく、多くのボランティアが支援に参加した。行政も民間もその支援体制には頼もしいものがあった、と言っていい。だが、そうした支援が、被災者の思いと、微妙にずれているという声もある。ときには、復興を望む被災者やその家族の足をひっぱる対応も見られた。齟齬(そご)はどこにあったのか、レポートする。
文/橋本 敏彦
2007年9月26日
自力再建の足をひっぱるもの
柏崎市のある地域 ――。倒壊の危険がある家には赤紙が張られている。黄札が張られている半壊の家もある。だが、そうした家の人たちがすべて避難所や仮設住宅で生活をしているわけではない。倒壊を免れた増築部分や別棟のある家には、人々が戻ってきている。そこを仮のすみかとし、人々は自力で生活復興を進めようと活動を始めているのだ。
写真/日経アーキテクチュア
そうした人々が目指す大きな目標は、家の建て替えだ。行政から資金の補助もある。
だが、その作業が遅々として進まないでいる。家を撤去する業者が指定されるため、その業者が来るのをただ待ち続けているのだ。
今回の被害は規模が大きい。取り壊さなければならない家は多く、解体作業の量も膨大だ。それにもかかわらず、市の指定した解体業者の数は限られている。しかも、かつてないほど解体した廃材の分別が厳密に義務付けられているため、なかなか作業自体が進みにくくなっている。いつ自分の家に来てくれるのか、指定された業者に問い合わせても、前の作業に手間取っていれば、どんどん遅れる。
指定業者とは別の業者に頼めば、作業は進むかもしれない。だが、そうすると資金援助が受けられない可能性があるのではと不安になるし、また指定業者以外の業者も市などへの手続きが面倒で積極的に手を出そうとしない。高齢者の世帯では、建て替えをすべて自費でまかなう余裕のあるところなど、ほとんどない。
土地に余裕のある家では、壊れた家とは別の場所に家を建てようかとも考える。だがこれも資金援助の対象にならなくなってしまう。「壊れた家があった場所」に家を建てることが条件になっているからだ。役所に問い合わせても、担当者が別の支援に忙殺されていることが少なくない。
被災者とはいえ、自力で生活復興できる、元気な人たち――。そうした人たちを足止めさせているものは何だろうか。「まるでそば屋の出前だ」。そうぼやきながら業者が来るのを待つ人々。時間だけが無駄に過ぎていく。地震から2カ月が経過し、季節は夏から秋へと変わった。秋風とともに冬への心配が始まる。
写真/日経アーキテクチュア
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