特集:
法律的に正しいのはどっち?
飲食店のトラブル処理

 法律関連のテレビ番組が増え、お客からも「これって法律的にどうなの?」と、切り出されかねない昨今。飲食店には、法律問題に発展しそうなお客や社員とのトラブルがいっぱい。「知らなかった」では済まされない知識を身に付けて、訴訟やクレーム、不当な要求から、店を守ろう。

文/鷹野 美紀(日経レストラン)、イラスト/JERRY
取材協力/林勘市法律事務所 中井 淳 弁護士
2005年8月24日

 何気なくやっていることでも法律に照らすと、店に責任があるかもしれない――。テレビでも法律関係の番組が高視聴率を維持し、誰もが権利を主張するようになった。飲食店もこれに巻き込まれる可能性は大いにある。

 外食大手のすかいらーくでも、先日お客から「訴えてやる!」と言われ、トラブル解決に苦労した。原因は、「すかいらーく」のデリバリーメニューに載っていた「山盛りポテトフライ」などのカロリー表示。これらが間違っていた。5月に「数字が違っているのではないか」とお客から問い合わせがあり、慌てて確認したところ、ポテトフライは、素揚げした場合に吸う油の分を加算するのを忘れ、調理前のカロリーだけをメニュー改訂時に記載していたのだ。カロリー表示は、飲食店にとって義務ではなく一種のサービスだが、これが原因で法律トラブルに発展することもある。

 法律となると、無罪・有罪の二元論に陥りがちだが、状況によって責任の度合いや賠償額も異なる。ケースバイケースと考えるべきだ。

 万が一の時に負わなければならない責任を軽減するためにも、必要最低限の法律の知識を身につけ、事前に対応しておくことは必須。次ページからのケースで、あなたは「気賀 強志」さんと、「小心者男」さんのどちらの行動を取るか考えてもらいたい。最後のページであなたの法律トラブルについての知識レベルが判明する。

●気賀 強志さん
洋食店の経営者。常に前向きで、強気な性格。自分の意見を主張して、様々な困難を乗り切ってきた

●小心 者男さん
喫茶店の経営者。心配性で、トラブルが起きたら、まず謝って穏便に済ませたい、穏健派

●日経レストラン法廷の判事
飲食店の経営にも詳しい。今までに法律トラブルをいくつも解決し、常に公正な判断をしてくれる

※記事中の判事の判断は、あくまで一般的な例を示したもの。事例によっては当てはまらないケースもありえます



訴えられて困った!(1)
子供がスープで火傷慰謝料は払う?

 先日、2~3歳の子供を連れた家族客が来店しました。お子さん用にお子様ランチの注文をいただいたので、セットで付いているカップスープをテーブルに持っていったところ、その直後に子供の泣き声が響き渡りました。スープが熱かったため、口の周りと舌を火傷したようです。そこで、両親にすぐに近くの病院に連れて行ってもらい、経営者の私も後から追いかけました。

 幸い、軽度の火傷ですみ、数日通院するだけで、火傷の跡も残らないと医師は診断してくれました。しかし、両親の怒りは収まらず、「大して注意もせず、子供に熱い料理を出すなんて!慰謝料を払いなさいよ」と息巻いています。

 確かにスープは熱かったかもしれません。また、スタッフに確認したところ、提供時に「お熱いのでお気を付けください」などの注意はしなかったようです。しかし、ぬるいスープを提供しては、他のお客からクレームが付きます。こんな場合でも、火傷の責任は店が負わなければならないのでしょうか?

■強硬派
 スープは熱くて当たり前なんだから、店側に責任はないだろう。店員が手を滑らせてスープを頭の上から掛けちゃったというわけではなく、自分で飲んで舌を火傷した程度。医者も軽い火傷だって言ってるんだから、菓子折りを持って謝りに行く程度でいいんじゃないの? 経営者はすぐに病院に駆けつけたし、責任者としての責務は十分果たしてると思うよ。慰謝料までは必要ないんじゃないかな。

■穏健派
 子供が飲むと分かっていて、アツアツのスープを持っていったのは、店側の不注意だと思う。提供する時も「熱いのでお気を付けください」など、一言でいいから声を掛けるべきだよ。このトラブルは店側がもっと配慮していれば起こらなかっただろう。こう考えると、せっかくの家族の食事の時間を邪魔したのだから、治療費や通院費だけでなく、慰謝料も払う必要があるのでは?

店だけが悪いわけではないが慰謝料も多少必要

 こういった事件はなかなか難しいのですが、店側の責任とされる場合があります。店の落ち度は「お熱いのでお気を付けください」と言わなかったこと。この一言があれば、こういったトラブルを回避できる可能性は高かったはずです。

 今回のケースの場合、店側の落ち度が認められるため、発生した治療費はもちろん、その後の通院費は、店が負担しなければならないでしょう。慰謝料も多少は必要かもしれません。

 今回のケースとは少し異なりますが、店内で子供が走り回り、転んでケガをした場合も、店が罪に問われる場合があります。店内に段差がある場合は「段差があるのでお気を付けください」と表示したり、ファミリーレストランなど子供が多い場所では、テーブルは角ばっていないものを選ぶなどの配慮をすると、万一の時に店の過失が軽減される場合もあるのです。

訴えられて困った!(2)
店の駐車場でお客同士が事故

 店の駐車場内で、お客同士の車がぶつかるという事故が発生しました。以前から駐車場内には「駐車場における事件・事故の責任は負いかねます」と書いた看板を立ててあるのですが、お客から「通路は小型車がぎりぎりすれ違える程度で狭い。照明はなく夜は真っ暗で、事故が起きるのも当然。店の責任だ!」と言われ、修理費を請求されました。お客同士のトラブルなのに、店にも責任があるのでしょうか?支払うとすればいくらぐらいですか?

■強硬派
 駐車場内にちゃんと「責任は負えない」という看板を立てているんだし、事故は、お客同士の問題。店は一銭も払う義務はないだろう。

■穏健派
 店の駐車場だから、管理責任があるんじゃないかな。お客にも問題はあるかもしれないけど、多少の修理代負担は仕方がないね。

部分的に店が保障する

 看板で断っていても、駐車場の広さや明るさが十分でないことが事故の原因なら、店側の責任。修理費を全額とまではいかなくても、少しは保障しなければなりません。管理責任は店にあります。駐車場では、事故だけでなく車上荒らしなどを含め、事件が起きにくい環境を作ることです。

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