「マニュアル作りがBCP」ではない
小林 誠氏
このように企業を巡るリスクはさまざまだ。リスクをゼロにすることはできない。必ず想定外のことが起こり、それを予測することは不可能である。
だからこそ、何かが起きたときに事業の復旧を早めるBCPが必要なのだ。BCPにおいては、予防はメインではなく、起きたときにどうするかがメインとなる。
災害や事故対策において、三つの局面がある。「ミティゲイション(mitigation)」は緩和という意味で被害を減らすことであり、耐震対策などが該当する。「プリベンション(prevention)」は予防、「プリペアドネス(preparedness)」は起きたときの計画策定である。BCPはこのプリペアドネスの一つといえよう。
事業所の中で新型インフルエンザの患者が発生したら事業所は直ちに閉鎖されるだろう。マグニチュード(M)7.3の大地震が起きたら、電力は6日間で復旧しても水道や鉄道は簡単に復旧しない。そのようなときに、被災地での事業復旧は難しい。それならば、他の場所で事業を復旧すべきだが、日本企業の多くはその対策が抜け落ちている。
インターリスク総研では、一昨年、昨年とBCPの実態調査を実施した。BCPの策定状況では、「策定している」が2005年には22.7%だったのに、2006年には12.7%に減っている。一方、「策定中」は5.6%から34.4%に増えた。
出典:インターリスク総研、2006年度一部上場企業BCP実態調査報告書
この原因を分析すると、BCP策定済みの企業が増えたとは言えないが、BCPに対する企業の理解が深まってきたと考えられる。つまり、05年には危機が発生したときの初動対応やマニュアルの整備がBCPと考えられていたが、06年になると事業の回復・復旧まで策定しないとBCPとは言えないという当然の考え方が普及してきたのだろう。
実際、「どの段階までBCPに含むか」という質問に対して、「緊急時対応」が86.9%から84.3%とほぼ横ばいに対して、「事業回復・再開・全面復旧」が50.6%から74.1%に増えている。「緊急対応マニュアル」作りだけがBCPじゃないという意識の転換が進んでいる。
出典:インターリスク総研、2006年度一部上場企業BCP実態調査報告書
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