“ダメBCP”は地震・停電から発想する BCP(事業継続計画=Business Continuity Plan)が注目を浴びている。だが、個々の企業は、どう取り組むのか迷うことが多い。考えておくべきことが多岐にわたり、適切な指針や判断基準が見あたらないのだ。そうしたなか、2007年2月16日に事業継続対策コンソーシアム主催による「事業継続対策セミナー」が開かれた。立命館大学院客員教授・インターリスク総研総合リスクマネジメント部長の小林誠氏は現場におけるBCPの導入・運用をよく知る立場で、実践的なBCPのあり方を語った。

立命館大学院客員教授 インターリスク総研総合リスクマネジメント部長 小林 誠氏
文/吉村克己、写真/佐々木辰生
2007年3月9日

立命館大学院客員教授 インターリスク総研総合リスクマネジメント部長 小林 誠氏

 BCPというと、地震防災の延長線上にあると勘違いされることも多いが、BCPを地震や停電など原因から考えて導入すると、使いづらいものになる。

 事業を停止させる原因はいくつもある。だから、その一つひとつに対策を立てるのは大変だし、また固有の対策を立てても別の原因で事業が停止した場合に対応できないということも起こり得る。それよりも、原因を想定せず、事業が続けられなくなったという結果から発想するのがよい。何らかの事故や災害で「事業が10日間停止したら……」と考えるのだ。

 例えば小松左京氏の小説『首都消失』のように、いきなり正体不明の雲に覆われて外部との連絡が途絶したらどうなるかと考えればよい。事業所や本社、工場が人間や物体の出入りはおろか通信もできないとなったら、どうするか。原因主義ではなく、結果主義で考えるのがBCPの基本である。

 2005年7月、ロンドンの地下鉄で同時多発テロが発生した。米国の9・11や地震などと違って、地下鉄内のテロは発生時に被害を受ける可能性のある人たち全員がその状況を知ることはできない。したがって、どの段階でBCPを発動するか、対応体制などBCPのグレードをどのように上げていくか(これをエスカレーションという)判断が難しい。この事件は徐々に拡大するリスクに対応することの難しさを教えてくれた。

 BCPを必要とする企業の危機は至るところにある。例えば、インド洋の大津波のように地震の揺れによる被害はなくても、事業停止は起こりうる。地球温暖化によって今後、夏場の豪雨や台風は急増するだろうといわれている。また、鳥インフルエンザなど新型インフルエンザが世界的に流行する「パンデミック」の危険もある。最近では、外資系企業を中心にパンデミックBCPが策定されるようになっている。

 1918年に大流行したスペイン風邪では、なんと感染者が6億人、死者は4000万~5000万人に達した。当時の世界人口は8~12億だから、全人口の半数以上の人々が感染したことになる。第二次世界大戦の戦死者が1500万人だから、スペイン風邪による死者はそれよりも多かったのだ。ちなみに、スペイン風邪流行の5年後に関東大震災が起き、日本経済が大打撃を受けた。

 
 

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