耐震、火災 ― 直下地震対策はどこまで進んでいるのか 危機管理産業展2006 シンポジウム「首都直下地震を検証する」(2) パネルディスカッション

火災の危険が高い木造住宅密集地域

中林
 耐震補強、耐震性の向上という点について、行政の立場から中村さんにお話をうかがいたいと思います。

東京都危機管理監 中村 晶晴氏

中村
 わたしは、先ほどキーノートスピーチでお話しさせていただいた島田から引き継ぎまして東京都の危機管理監を務めております。

 まず、東京都の地震被害の想定ですが、マグニチュード6.9と7.3で試算しておりまして、6.9の場合、建物の全壊は約6万棟と出ております。阪神・淡路大震災では、約10万5000棟でしたが、マグニチュードは7.3でした。東京に7.3を当てはめると、約13万棟が全壊となり、これを上回ることになります。

 倒壊よりもっと危険な建物の焼失はマグニチュード6.9で風が弱い毎秒6mでも約18万棟、7.3で風が強い毎秒15mになると約35万棟に達します。阪神・淡路大震災では7432棟でしたから大幅に上回ります。これは消防車が順次消火していくことを前提にしておりまして、消防車が動けなくなると、さらに被害は拡大することになります。

 次に震源ですが、東京湾北部の場合、江戸川の沖を想定しており、震度6強の地域はおもに区部東部に現れます。この地域は隅田川、江戸川、中川、荒川と、江戸時代から利根川の下流域で、地盤が軟弱なため揺れが大きくなります。

 もう一つ、震源を多摩に想定した場合(マグニチュード7.3)でも、震源から離れた地盤の悪い海岸線の地域に震度6強が現れます。

 建物の倒壊は、東京湾北部地震マグニチュード6.9では区部東部を中心に、7.3になると区部全体に広がっていきます。全半壊合計で27万棟と48万棟という膨大な数になります。

 火災は木造住宅密集地域に集中しますが、東京にはまだ2万3000ヘクタールもそうした地域が存在します。東京都の都市計画道路(幹線)の完成率はまだ58%程度で、住宅街の内部は消防車も通れない状況です。建て直すときには、幅員4mの道路になるよう、セットバックしてもらうことになっていますが、そうすると建物が小さくなるので、建て直すことができずに古い家が残っている地域があります。

 耐震化の現状を見ると、2000年度(平成12年度)で木造建築の総数は197万棟ですが、1981年の新耐震基準以降に建った新耐震の建物の比率は32%です。非木造では総数が73万棟で、新耐震率は59%になります。現在までに新耐震率は上がっていると思いますが、木造はおそらく半分に達していないでしょう。

 都内の公共施設2万5000棟の80%が耐震化されていますが、全国ではようやく58%というレベルです。

 それでは、東京都はどうしていくのか。東京都では耐震改修促進計画を立てており、81年以前の旧耐震の建築物に対する耐震補強などを含めて2015年度(平成27年度)までを整備プログラムの計画期間として、今後の具体的な対策などを検討しております。

 計画では大きく二つの取り組みを考えています。「耐震改修促進」と「不燃化」です。耐震改修促進では、住宅の耐震診断への補助、住宅・マンションの耐震補強への補助、公共施設の耐震化がテーマです。

 不燃化では、木造住宅密集地域2万3000ヘクタールすべてをいきなり改修するのは難しいので、重点整備地区および整備地区を併せて6500ヘクタール指定して、道路の拡幅と共に、平成37年に不燃領域率を70%にするべく整備を進めております。

 不燃領域率というのは地域の全面積に対して、道路、公園、不燃建物の面積の割合を表しているものです。70%になれば、木造の建物が不燃の建物に取り囲まれる形になり、延焼はしなくなります。そこまでにあと20年ほどかかりますが、それでも残りの1万7000ヘクタールは手がつけにくい状況です。

 不燃化の取り組みでもう一つは「都市計画道路等の整備による延焼遮断帯の形成」が必要だと考えています。

 例えば下北沢地区に25mの道路を通すという計画がありますが、狭い路地の方がいいという人たちもおり、反対運動が起きています。反対運動のためにまちづくりが進まないというケースもあります。東京都としては耐震補強だけではなく、再開発や木造住宅密集地域の改善を大きな柱にしております。

中林
 建物の耐震の促進だけでなく、やはり基盤整備が必要ということですね。これは別の言い方をすると、木造密集市街地とは、80年間、都市計画を行ってこなかった結果だといえます。やはり21世紀に何回かの大地震が起きることを考えると、どこかで都市計画をしっかりして、最低限の基盤を整備する必要があるのでしょう。

SAFETY JAPAN メール

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。