特集: 食卓に迫る!? 浜辺のゴミ問題
目を背けてはいけない「漂着ゴミ」の現状

 各地の海水浴場が観光客で賑わうこの季節、たびたび耳にするのが浜辺のゴミについての話題だ。しかし浜辺のゴミは、夏に押し寄せる観光客のマナーの悪さだけが原因ではない。たとえ海から遠く離れた所に住んでいようとも、浜辺のゴミは、実は私たちの普段の生活に深く関係している。今回は、浜辺はもちろん年々増えていく海のゴミが、私たちの生活にどのような悪影響を与えるのかを紹介しよう。

文/藤崎典子、写真/藤井誠
2005年8月9日

日本の海に流れ着くゴミの正体

 2005年4月1日から、静岡県熱海市では「路上等の喫煙防止に関する条例」(通称:熱海サンビーチ等禁煙条例)を施行した。6月26日からは熱海サンビーチ、および周辺遊歩道を喫煙禁止区域に指定している。

 砂浜に散乱するたばこの吸い殻の中には、火のついたまま落ちているものもあり、海水浴客にとっては非常に危険だ。また“歩きたばこ”は、特に混雑時、身体だけでなく衣服・持ち物にも被害を及ぼす可能性がある。

 この条例制定に関して、熱海市が2004年7月に行った市民アンケートでは、72.4%の賛成が得られたという。熱海市役所市民福祉部環境課環境企画室の中野念氏は「誰もが健康で安全に過ごせる、質の高い観光地作りのための一つの取り組みです」と語る。

 観光産業を収入源としている人や地域にとって、たばこをはじめとしたゴミによる景観の損失は、観光客の減少につながり、経済的に大きな打撃となる。それだけではない。ゴミによって、海のレジャーを楽しむ人たちを危険にさらしているわけだ。

 海のある環境は島国に住む私達にとって身近なものだが、古来より日本人が愛してきた白砂青松の景観は、大量に投棄・漂着するゴミによって損ねられているのが現状だ。浜辺のゴミ問題は、観光客のマナーを戒めるためにも観光シーズンには頻繁にクローズアップされるが、実は一年を通じて深刻な問題でもある。

全国クリーンアップ事務局(JEAN)
ディレクター
小島あずさ氏

 浜辺に一年中、漂着し続けるゴミが与える環境への影響は、観光地に限ったことではない。実は、海から離れた所で生活をする「私たちの食卓のすぐそばまで来ている問題だ」と語るのは全国クリーンアップ事務局(JEAN)のディレクターを務める小島あずさ氏だ。

 「網を引き上げたら、生き物だけでなくゴミも大量に引っ掛かって来きます」と小島氏が語るように、浜辺のゴミはめぐりめぐって私たちの口にするものにかえって来ているのである。

 「浜辺に漂着するゴミ問題は深刻です。日本の海岸に落ちているゴミの量は年間で約10万トンといわれていますが、海中に沈んでいるゴミや海洋に流れていったゴミの量は把握できていないため、実際はどれだけの量があるのか分からないのが現状です」と小島氏は強調する。

 JEANの発足は1990年のこと。「ゴミをただ拾うだけでなく、統計を出し、根本的に把握することで発生を抑制する仕組みを世界規模で作っていこう」という米国の環境NGO「オーシャン・コンサーバンシー」の呼び掛けに共感し立ち上がって出来た団体だ。

 JEANでは、全国から参加者や参加団体を募り、春と秋にクリーンアップキャンペーンを行っている。特に秋には世界共通のデータカードを用いて、収集したゴミの種類や個数を項目ごとに分類し(※1)、統計を出して調査・分析に活かしている。

※1 項目ごとに分類:海草類や流木などは環境にインパクトを与えるものではないので、JEANの統計ではゴミとはカウントしていない

 浜辺に落ちているゴミで多いのは、硬質プラスチックやプラスチックシートの破片、ポリ袋、大小の発泡スチロール、タバコの吸い殻など。小島氏が指摘する最大の問題は、観光客などによるその場で発生したゴミよりも、船や他の地域で捨てられ、流れてきたゴミの方が量としては多い、ということだ。

 「浜辺のゴミの6割、場所によっては8割が、漂着ゴミなのです。中でも多いのは“ポイ捨て”や昔からの習慣により投げ捨てられ流れてきた河川由来の生活ゴミです。韓国や中国、ロシアから日本に流れ着くゴミも大部分は生活ゴミですが、都会から出て野ざらしのまま埋め立て地や廃棄場に運ばれたゴミが、カラスなどの動物によって運び出されたり、雨や風によって散乱し、河川に入り込むケースもあり、きちんと分別して捨てたつもりのゴミも、私たちの知らない間に海のゴミと化して環境を汚染しているのです」(小島氏)。

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