特集:
睡眠不足の原因は熱帯夜だけではない!
大事故や生活習慣病を招く「睡眠時無呼吸症候群」とは?
しかし、慢性的な眠気や倦怠感があるとなると「睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)」の可能性がある。毎日の生活だけでなく、命にかかわるこの病気を、あなたは単純に「ただの睡眠不足」とやり過ごしてはいないだろうか? そこで睡眠時無呼吸症候群とは一体どのようなものなのか。日本医科大学呼吸ケアクリニック村田朗氏に聞いた。
文/藤崎典子、写真/藤井誠
2005年8月8日
その眠気、本当にただの睡眠不足?
日本医科大学呼吸ケアクリニック
村田朗氏
不眠症や過眠症、睡眠中に起こる異常行動など、睡眠と覚醒に関連する病気である「睡眠障害」の中でも、近年、特に注目されているのが睡眠時無呼吸症候群だ。
2003年、JR山陽新幹線の運転士が起こした居眠り運転によるオーバーランによって、日本でも注目を集めた睡眠時無呼吸症候群は、欧米では1980年代ごろから盛んに研究が行われており、「睡眠中に10秒以上呼吸が停止している状態」もしくは「1時間に5回以上、呼吸の流れが50%以下に低下する状態」であるという。
「現在、(睡眠時無呼吸症候群で)治療を受けている方は約2万人ですが、潜在患者数は約200万人といわれています」と日本医科大学呼吸ケアクリニックの村田朗氏は語る。
少々、専門的な話になって恐縮だが、実は睡眠時無呼吸症候群は、大きく二つに分けられる。具体的には、「中枢型睡眠時無呼吸症候群(Central SAS:以下CSAS)」と呼ばれるタイプと、「閉塞型睡眠時無呼吸症候群(Obstructive SAS:以下OSAS)」と呼ばれるタイプだ。
このうちCSASは、呼吸中枢の障害によって、呼吸そのものが停止してしまうものだが、症例としては比較的少ない。多く見られるのは、睡眠中に喉や舌の筋肉が緩んで気道がふさがれ、気流が止まってしまうために引き起こされるOSASである。これは、寝ている間に首を絞められているような状態になる、と想像すれば分かりやすいかもしれない。
OSASによる身体への影響の一つとして、「日中昼間に我慢できないほどの眠気を催す」と村田氏は挙げる。
一般的な睡眠では、身体の休息である「レム睡眠(REM:Rapid Eye Movement)」と、脳の休息である「ノンレム睡眠 NON REM)」が90分周期で3~4回繰り返す。中でも一番深い眠りは、就寝後1回目と2回目のノンレム睡眠時とされている。
OSASの患者が日中昼間にひどい眠気に襲われるのは、脳を休めるノンレム睡眠がきちんと取れないためだ。睡眠時に、多い人では1時間に50回も60回も「呼吸が止まっているから起きろ」という信号が出るため、脳が休まらないからである。
睡眠時に脳が十分な休息を取れないと、内分泌系にも影響が出てくる。通常、昼間は自律神経系の一つ「交感神経」が働き、夜は「副交感神経」が働くことで、様々なホルモンバランスが整えられる。
ところがOSASの場合は、夜間でも脳が覚醒しているため、休むべき交感神経が働きっ放しになってしまう。そのため、自律神経が乱れ、ホルモンの分泌も変化してしまい、高血圧症や糖尿病、高脂血症などが起こりやすくなる。つまり、寝ている間に動脈硬化が進み、気づかないうちに「生活習慣病」になってしまうのだ。
また、呼吸停止によって起きる「低酸素血症」によって、OSASは循環器系にも影響を与える。身体をめぐる動脈血の酸素欠乏状態を補うために心臓や血管に掛かる大きな負担が、不整脈や心筋梗塞、脳梗塞を招く原因となるのだ。
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