台風は大型化している(後編)
都市でもあなどれない土砂災害
次に、降雨量が多くなると、浸水以外に心配なのが土砂災害。東京農工大大学院の石川芳治教授は、土砂災害防止法で規定されるがけ崩れ、土石流、地すべりの「土砂災害3種」の違いを次のように解説する。
(1) がけ崩れ
雨や雪どけ水、地震などの影響で、勾配30度以上の急傾斜地で起きる落石や土砂崩れのこと。

写真01:平成15年7月 水俣市のがけ崩れ(写真提供:石川教授)
(2) 土石流
大雨などで山の上が崩れ、土砂とともに大量の水が流れる現象。人家に入り込んで家屋を破壊することもある。基本的に川の流れに沿って大量に土砂と水が流れるので被害の範囲と規模は大きい。

写真02:平成11年6月 広島市の土石流被害(写真提供:石川教授)
(3) 地すべり
地盤の弱いゆるい勾配で、ゆっくり土塊が動く災害。普段は地盤が安定していても、雨や雪どけ水、地下水を含んだ結果、地盤が弱くなって、斜面が滑り出してしまう。

石川芳治教授
土砂災害は、今年の梅雨前線の豪雨被害や新潟中越地震での報道イメージが強いせいか、長野や新潟などの山間部で起きるものだという先入観がある。
ところが、国土交通省砂防部が発表した「平成8~17年の10年間の都道府県別土砂災害発生件数」を見ると、意外にも首都圏でも被害が多数ある。
特に注意したいのは神奈川の606件という数字で、新潟に次いで全国2位の発生件数。ほとんどががけ崩れである。横浜・川崎・横須賀・鎌倉などでは狭い土地に住宅地が密集し、がけや丘が数多くある。危険個所は県内で7136個所。「一つひとつの被害は小さいが、数が結構あります」と石川教授は言う。
今年はなんと東京・五反田でもがけ崩れがあった。8月9日午前6時半、東京都品川区西五反田の区民住宅の脇の、JR東日本社宅斜面横が崩れ、区道に土砂や樹木が流れ込んだ。幸い人は巻き込まれなかったが、集中豪雨によって地盤が緩むと、都心でも土砂災害の可能性は高まる。都市開発が進むとがけ下にも人が住むようになり、事故の危険性は増しているのだ。
東京都の場合、危険個所は3718個所。土石流危険個所は青梅市・あきる野市・八王子市などに多い。しかしがけ崩れの危険個所を示すスポットは、港区・目黒区・品川区・文京区など都心部にもかなりある。
ただ、こうしたハザードマップの整備はまだ完全とは言えない。「全国的に市町村によって防災の取り組みに差がある」(石川教授)のが実態で、なかなか細かい場所まで特定・公表されていない。土地の値段にも影響してしまうので、不動産業者にとって危険個所の特定は好ましくないという事情も考えられる。心当たりの方は、家族とマイホームを守るため、今一度周辺の土地の形状を確認し、注意しておくべきだろう。
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