台風は大型化している(後編)
企業に求められる危機管理
さらに村山氏は、水害に対して「企業では備えがあまりなされていないのではないか」と指摘する。都市の企業人は防災訓練があってもどこか他人事のムードがある。「案外、家庭や地域社会の方が地震・水害の防災意識が高い」(村山氏)。
だが、最近の気象現象を見ると、都市部水害の危険性が高まっていることは明らかだ。企業として危機管理体制を組むことは必須であろう。村山氏が挙げる対策は以下のとおりだ。
1.心臓部を地下に置かない
1994年9月、伊丹空港が集中豪雨被害に遭い、丸1日空港機能が停止したことがあったが、その原因は空港ビルの地下に機械室を置いていたことだった。地下浸水の結果、ビル全体にかかわるメーンの電源が絶たれると、事態は深刻になる。エレベーターや空調などの停止や、パソコンで作業中のデータが消失する危険もある。
浸水から逃れるために、電源室や機械室などの心臓部はできるだけ高いところに置くのが理想だ。それがかなわなければ、せめて非常電源、予備電源は3階以上に設置しておきたい。ライフラインの復旧は電気→水道→ガスの順番に進む。ガスは危険性の問題から復旧作業・点検が遅く、1週間以上かかる場合もある。
2.地域の災害履歴を調べる
できれば社屋を設置する前に、その地域で過去に集中豪雨や台風による災害がなかったか調べておく。いくら土地・建物が安く交通至便でも、豪雨にたたられたくはないもの。もし既に社屋が設置されて被害があり、移転も不可能な場合は、次の対策を万全にしておこう。
3.ハザードマップを頭に入れよ
国土交通省や各自治体のハザードマップを確認し、オフィス近辺の災害影響度や避難経路を把握しておく。
4.災害対策を想定しておく
床上・床下、あるいは2階まで浸かるかどうか、降雨量によるシミュレーションをする。主電源が地下にあり移動できない場合は、非常電源が何時間持つか、工場の場合は機械の損害や運転・停止などの機能がどうなるかをチェックしておく。また、災害が起きる曜日・時間によっても対策は変わる。オフィスや工場に人はいるかいないか、出勤日か休日かによって、動き方は変わってくる。
5.情報系統を整備する
ライフラインの一番のポイントは「情報系統を確保すること」と村山氏は訴える。電源が絶たれた状態でいかに各所の従業員とコンタクトをとるかが鍵。情報の体系化と責任者の明確化は必須だ。テレビやラジオから災害概況を聞くことも大事だが、企業の場合は自分の会社がどういう状況かを知り、総合的に情報を全体に伝えることも重要。停電が起きて携帯に一斉にかけるような状況になると回線はパンクしてしまう。社内の正確な情報を集めて整理する手段と方法が求められる。
6.被害情報の収集
社内情報収集と同時に、台風(集中豪雨)情報の取得と分析は欠かせない。地震情報は起きるとすぐ放送されるが、雨の場合はその地域で雨が降っていなくても、河川の下流に社屋があれば、上流地点で大雨になった場合、時間差で被害を受ける可能性がある。河川水位情報などは、いまはインターネットで把握できる。国土交通省がリアルタイムで発表する「川の防災情報」などを参考にしたい。
どの程度の降水量が危険かは、その地点の年間降水量を目安にすればよい。年間降水量の5%を超えたら危険信号、10%を超えたら「必ず被害が出る」と村山氏。年間2000mmの降水量であれば、降雨量が200mmを超えた時点で危険になる。情報を的確に判断し、企業のトップ層だけでなく従業員層全体に情報を知らせることが、災害を回避する近道となる。
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