特集:
被害のメカニズムから守り方まで
ネットワークの落雷対策
Part3:建物全体で守る
文/阿蘇 和人(日経NETWORK)
2006年9月5日
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共用接地で電圧そろえ電位差なくして侵入を防ぐ
Part2では,一般ユーザーがとれる対策を見てきた。しかし,これらの対策を完璧に施すのは意外と面倒。いちいち雷ガードを導入するのは手間がかかるし,アースで電圧をそろえようとしても,どこでもアースが取れるとは限らないからだ。
建物全体で雷サージ電流から守る
実は,この難しさを解消する根本的な対策がある。個別の機器単位で導入していた「雷ガード」や「アース」といった方法を,住宅やビル全体で導入するのだ。こうすれば,雷サージ電流は,建物全体でバイパスしたり,アースに逃がしたりしてくれる。
建物全体で対策すれば,電力線や通信ケーブルから雷サージ電流が侵入してくる心配をしなくてもよい。アース端子につなげば,そこは建物共通のアースにつながっているので,ほかの機器のアースとの間で電圧が食い違うこともない。
日本国内で雷対策が盛り込まれたビルや住宅は,現実にはまだあまりない※1。しかし,法制度の整備が進められており※2,近い将来には増えそうだ。NTTのビルを例に考え方を探り,住宅向けの動きを確認しておこう。
※1 まだあまりない背景には,日本国内の建築基準は雷サージ電流の侵入を考慮しないものだったことがある。独自に雷対策を盛り込もうとすると,余計な設備が必要になるといった問題があった。
※2 法制度の整備が進められており
2003年に日本規格協会(JIS)が「JISA4201-2003(建築物等の雷保護)」としてすでに定めている。2005年に改正された建築基準法では,この規格に基づいたビルの建築が認められるようになった。
通信設備を多数収容するNTTのビルでは,雷サージ電流による被害をゼロにしたい。NTTは雷サージ電流対策として,1996年からビルの改修を順次始めた。アースによる雷サージ電流対策の考え方をビル全体に取り込んだものだ(図3-1)。
図3-1 NTTは1996年から接地を一本化している
ビル内の電圧を同じにすることで,雷サージ電流が流れ込むのを防いでいる。接地を一本化したことで,落雷被害はほとんどなくなったという。
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NTTのビルの接地は,通信用,機器用,電源用,避雷針用でばらばらだった(図3-1のA)。ビルのすぐそばに落雷すると(同A-1),異なる接地の間で電位の差が生じる(同A-2)。その結果,アース線を通って逆流雷の雷サージ電流が入り込んでしまっていた(同A-3)。雷サージ電流対策の基本である等電位化ができていなかった。
そこでNTTは,ビルを上下に貫く形で接地用の幹線を引き通し,フロアごとに1カ所でアースを取るように改修した(同B)。幹線の接地と,電源の接地は別に取るが,電気的に連結している。
鉄骨と接続して電圧を安定させる
さらに,接地用幹線をフロアごとに建物の鉄骨とつないだ。ビルに落雷すると,建物の外を走る雷の電流の影響で,鉄骨の電圧が変動する。接地している機器の電圧との間に大きな差ができると雷サージ電流が流れてしまう。これを防ぐために連結した。
これで,建物内の電圧がほぼ同一になり,鉄骨とアース両方の電圧も同じになる。落雷があっても(同B-1),電圧が食い違ってくるのは共用接地と電源用接地の間だけ(B-2)。そこに雷サージ電流が逆流しても,電気的に連結している部分を通過する(B-3)。電圧が一定になっている内部には,入り込めない。また,ビルに雷が直撃して外壁を雷の電流が流れるときに,内部に発生する誘導雷サージにも強くなった。結果として,「雷サージ電流による被害は桁違いに少なくなった」(NTT東日本の多田さん)という。
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