特集:
連載企画「水害の世紀(2)」
水害から逃れるカギは「自助」にあり!
~天は自ら助くる者を助く~

 日経コンストラクションでは、日本で浸水被害が多発し始めた状況をとらえ、 7月11日に『水害の世紀』というタイトルの書籍を発行。2004年に日本で発生した浸水被害などの記録を、カラー写真や被災者の証言という形でとどめる。さらに一歩踏み込んで、災害発生のメカニズムや災害から身を守るためのポイントもまとめた。

 この連載企画の趣旨は、『水害の世紀』の一部分を紹介しながら、水害はどういった場所で発生する確率が高いのか、浸水被害からどうやって自分や家族の命、さらには持ち家を守っていけばいいのかを解説するものだ。

 日本では過去10年間に、全国の市区町村の97%以上が水害や土砂災害に見舞われている。洪水による浸水被害を大きくする要因の一つは、日本の都市の多くが、洪水時の河川水位より低い土地にあることだ。堤防がひとたび決壊すれば、洪水が一気に広がる。

 日本の降水量は世界平均の約2倍で、梅雨期と台風期に集中して降るといった要因も重なっている。例えば、東京の月別平均降水量をみると、最も多いのは9月で208.5mm。これは、最も少ない12月の39.6mmと比較して5倍以上に当たる量だ。

 さらに、局所的な豪雨が年々、増加していることが追い討ちをかける。1時間当たりの雨量が50mm以上に及ぶ強雨が、2004年には470回を数えた。1996~2003年の平均、271回を大きく上回る。局所的な豪雨によって、特に中小規模の河川では一気に水位が上昇し、河川の氾濫(はんらん)を引き起こしやすくなる。

 このように、水害の危機が高まっているのに、住民は意外と無防備だ。例えば、2004年7月、新潟・福島豪雨によって甚大な被害を受けた新潟県中之島町(現在は長岡市に吸収合併)。水害後のアンケートで、59.2%の住民は刈谷田川(かりやたがわ)の水が自宅まで迫ることを想定していなかった。住民にとっては「まさか」の災害だった。

 いざ災害が発生すると、まずは自分の身は自分で守る「自助」が最優先となる。どうすれば、自助が可能になるのか。以下に解説していこう。(日経コンストラクション編集)

監修/森野美徳 文/日経コンストラクション編集部
2005年8月3日

【PART1】
リスクへの意識が「自助」の第一歩

 震災への備えに比べ、水害への備えをしている家庭は多くない。背景には、過去の水害の経験が伝承されなくなったことや、治水事業の進展によって、危機意識が下したこともある。しかし現実には、水害は全国各地で多発するようになっている。

まずはリスクに気付く

 災害時にはまず、自分の身は自分で守る「自助」が基本。自助の備えを平常時からするには、十分なリスク認識が不可欠だ。「自分の住む場所のリスクがわかれば、災害対策に必要なことの半分は終わったようなもの」と富士常葉大学の小村隆史助教授は語る。

 リスクを認識するには、行政が発表しているハザードマップを確認したり、災害図上訓練DIG(*)をしたりすることが有効と、小村助教授は指摘する。自らに降りかかりそうな危険を認知していれば、地域を流れる川の状態や、降雨情報にも敏感に対応できる。被害様相という「リスク」がイメージできれば、おのずと心とモノの準備は進む、というのが小村助教授の持論だ。

*DIG:Disaster(災害)、Imagination(想像力)、Game(ゲーム)の頭文字をとった災害図上訓練の略称。http://www.e-dig.netを参照

平常時の備えで被害は軽減できる

 水害の危険が高いと目される地域では、自宅を浸水に備えた造りにすることが求められる。また、水害に限らず地震など、いざというときのために、非常持ち出し品をすぐ手にできる場所に用意したり、家族で安全な避難場所や連絡方法を話し合ったりしておくことも重要。危機意識を家族で共有することが、自助の備えのスタートラインとなる。

堤防の決壊によって広域に浸水した新潟県三条市。避難所へ行けなかった人は建物の2階以上へ逃げた (写真:国土交通省)

トイレや台所を2階に設置することも有効

 自分の家を水害で失わないためにはどうすればいいのだろうか。(財)日本建築防災協会の「わが家の大雨対策-安心な暮らしのために」という資料を参考にポイントを挙げておこう。

 まずは床上浸水を防ぐことが、水害から家を守る重要なポイントだ。家の床を高くしたり、防水機能のある壁を設置したりすれば、水害が発生しても被害を軽減できる。

 いったん床上に浸水すると、1階が使用できなくなる可能性がある。台所、トイレ、寝室など、生活に欠かせない場所は2階に設置。屋根に外部への脱出口を設けることも有効だ。

 水害発生時は、家財を高い場所に移動しなければならないケースもある。階段の幅や踊り場を広くして、家財の移動路や避難場所を設けておくとよい。

洪水ハザードマップで危機管理を

 自分の住む地域、住みたい地域の危険度を把握する方法として、自治体等が提供するハザードマップがあり、いざというときの避難行動に役立てることができる。堤防が決壊したときなどに、どの地域にどのくらいの浸水が予想されるか、避難所や避難経路はどこかなどを住民向けにまとめている。

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