【本当にあった怖い話】信頼は一瞬にして崩れる(第2回)
許しを請うには血を流すしかない

本社の電話は年末年始、鳴り響き続けた
写真/石田理恵
諦め切れない社員たちは自家用車やタクシーを使って配達を続けた。電話がつながったお客には、「無料で差し上げるので、取りに来ていただけないか」と頼みもした。それでも、賞味期限の1月2日、約2000セットが残ってしまった。
翌1月3日、猿渡社長はある決断を下す。
「届けることができなかったお客様全員に、おせちセットと同額のお料理を無料で届けよう。届け終わるまでは、そのほかの事業は自粛する。工場は代替品の製造に専念する。1月から予定していた宅配の新規事業を凍結し、中国で進めていた工場建設やそのほかの営業活動も一切中断する」
その結果、2億円近い損害が出る。「やれば倒産するかもしれない。それを覚悟しての決断でした。『そこまでしなくても』という声もありました。でも、僕らが本当に痛みを感じ、血を流さなければ、僕らを糾弾する人たちに納得してもらえないと考えたのです」
そして1月6日の記者会見の席上、猿渡社長はこの方針を発表した。その翌日から、「クレームの電話はピタリと止まった」という。
結局、ふうどりーむずは首の皮一枚で生き残った。事件への誠実な対応などが評価され、地銀など3つの金融機関が、損害を穴埋めするための融資に応じてくれたのだ。
だが、「当面の資金繰りをしのいただけではジリ貧」。そう考えた猿渡社長は、3月13日、4億円の第三者割当増資を実施する。そのうち3億円を食品大手のニチレイフーズ(東京都中央区)が引き受けた。この結果、ニチレイフーズが出資比率40.2%の筆頭株主になった。「危機管理体制を整えるためにも、あえて大手の傘下に入ることを選んだ」(猿渡社長)。
4月、代替品の配送が終わり、通常の営業活動が始まった。約3カ月間の「謹慎期間」を経て「社内の空気が引き締まった」と、猿渡社長は話す。
「ここ数年、急にチヤホヤされて、やっぱり僕も社員もどこか浮かれていた。この事件を乗り越えることで、会社をもっといい方向に持っていきたい」

「おせち遅配」をめぐるふうどりーむずの動き
本社………北海道小樽市
売上高……8億1200万円(2005年8月期)
創業………1980年
事業内容…冷凍食品の製造・販売など

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