“働きすぎ”の自覚がある人は要注意――労災認定・過労死の現状

職場で身体や心を病まないために

 仕事によって起こる健康障害や精神障害の原因は、一つと言い切れない場合もある。「寝る間もない」「デートもできない」「心の安らぎが得られない」ほど長時間働き続けるというのは、量的に過重な状況だ。また、語学が苦手な人をたびたび海外に行かせたり、性格的に向いていないと分かっているのに営業職につかせたりするのは、プレッシャーやストレスを与えるという意味で質的に過重な状況といえる。量的過重性と質的過重性、それらがミックスされた中に、いじめやセクハラなどといった問題が入ってくることもあるため、その実体は非常に解りにくい。また最近の傾向として「健康障害や精神障害を起こす女性の割合が増えてきました。特に精神的な病気や過労自殺の数が多い」と岡村氏は語る。

 また、病んでいく人たちに共通する特徴として「逃げられない人」というのがある。性格的にまじめで、優秀な人が多い。中間管理職のような「逃げられない」立場にあって、仕事がどんなに大変でもまじめに取り組み続けた結果、健康を害して倒れていく、というケースが最も多いのである。

『労働者の疲労蓄積度チェックテスト』(資料提供:厚生労働省)
労働者用・家族用にセルフチェックが用意されている。中央労働災害防止協会安全衛生情報センターのホームページからも自動判定が可能である

過労死弁護団全国連絡会議代表幹事
弁護士 岡村親宜氏

 では、過重労働による健康障害を防ぐためにはどうすればよいのか。「一見、一人では解決できない問題のようですが、私は、やろうと思えばできることだと考えています。『僕はこんな仕事はできません』『今週は有給休暇を頂きます』と、会社に言えばいいのです。自分で言えない人は、医師の診断書を口実にしたり、家族に防波堤になってもらうのもいいでしょう。人間は休まなければ、破綻は必ず起こります。問題は自分がどこかでちゃんと、踏みとどまれるかどうかです」(岡村氏)。

 もし、その決断すら許さないような職場なら「躊躇(ちゅうちょ)せずに去る」という選択もありだろう。何を捨てるにしても、健康や精神を害し、過労死が待っているような状況よりは、ずっとましといえるのではないか。

 また職場全体の問題には、労働組合の取り組み方が挙げられる。前述した電通事件の際に、労働組合が取った態度は、「中立な立場として、企業側にも遺族側にも味方しない」という、本来の「資本に対して労働者の雇用、生活と権利を擁護する」はずの任務とはかけ離れたものであった。労働組合の今後の課題は、もし病気で長く休んでいる人がいれば、その理由や状態を把握するようなアンテナを張りめぐらせるなど、自分たちの仲間が今どうなっているかをきちんと理解し、フォローしていく姿勢や団結力を培っていくことにあるといえる。

SAFETY JAPAN メール

日経BP社の書籍購入や雑誌の定期購読は、便利な日経BP書店で。オンラインで24時間承っています。