特集:
防災の新常識(後編)
地震大国ニッポン、ここまでやれば大丈夫

文/浅山真、荻島央江(日経マスターズ)
2006年2月15日

【ひらつか防災まちづくりの会】
自分たちの町は自分たちで守る

 大地震の発生が懸念される地域にある神奈川県平塚市では、マスターズ世代が中心となって誕生した防災組織が積極的な活動を行っている。その興味深い活動内容をレポートする。



 神奈川県の中央部、相模湾沿いに位置する平塚市。昨今、南関東や東海地域を震源とする大地震の発生が懸念されている地域で、もしそれが現実になれば、甚大な被害は避けられない。にもかかわらず、市民の防災意識はこれまでさほど高くはなかった。現在、「ひらつか防災まちづくりの会」の代表を務める篠原憲一さん(58歳)でさえも、会を発足する前には、格別危機感はなかったという。

 しかし、ある映像が篠原さんの意識を変えた。神戸市の「人と防災未来センター」が制作し、NPO法人東京いのちのポータルサイトが編集した「阪神・淡路大震災の再現映像」がそれだった。高校時代の友人で、東京いのちのポータルサイトのメンバーだった木谷正道氏が提供してくれた映像はわずか1分30秒と短いものだったが、それでも篠原さんには十分な衝撃だった。

 地震の専門家や大手建設会社の地震研究所が中心となって、3年以上もの歳月をかけて作られた映像だけに、篠原さんは大地震の脅威や耐震力の弱い家のもろさをまざまざと見せつけられた。2003年1月のことだった。その後、この再現映像の評判が口コミで広がり、いつしか市内のいたるところで上映されるようになった。そして3月ごろには、このビデオを観た人たちがそれぞれにグループを作り、防災活動に取り組むようになっていた。

年8回実施する「防災まち探険」の後、「わがまちの防災マップ」を作成する

夏休みに子供向け防災イベントを開催。手作りの模型を使い耐震補強実験を行った

 10年ほど前から市民活動やNPO法人の運営などに関わってきた篠原さんも、仲間とともに「地域防災を進める会」を立ち上げ、平塚市議会に「耐震補強を進める請願」を提出。全会派一致で主旨採択されたという。同会には、様々な職場でリーダーとして活躍する同年代の同志が集結した。

 これに呼応するように、平塚市も動き出した。同年5月、JR平塚駅前に「ひらつか市民活動センター」がオープン。それぞれの市民グループが情報交換できる場としてこの施設が機能し始めるとともに、市は市民活動を応援するファンドも設立した。

 こうした流れの中で、「どのグループも同じ『防災』をテーマに取り組んでいるのだから、各々の活動はそのままに、ゆるやかな連携の会を作ろう。補助金を奪い合うのではなく、有効に利用しよう」という機運が高まり、2003年8月「ひらつか防災まちづくりの会」が発足した。

 現在は「地域防災を進める会」「防災を考える会」など、10の団体の主だったメンバーがこの会に参加。自治会やNPO法人、福祉団体などと連携し、防災講演会や防災イベントを実施するほか、防災カルタの制作、外国人のための防災マニュアル作成など、多岐にわたる活動を展開している。

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