どん底からの復活!

【心理学の観点から】
怒りや挫折の感情から素早く解放されるには?

感情を落ち着かせ疑問を投げ掛ける

 大きな挫折に遭遇し心理的混乱に陥った時、そこから脱却するにはどうすればよいのか?

 野口京子教授が紹介するのは、米国の心理学者アルバート・エリスが提唱する理性感情行動療法(REBT)だ。

 これは、起きた出来事に対する非理性的な考え方を理性的な考え方に変えて、ネガティブな感情や行動から脱出、前進していく療法だ。例えば、社員の裏切りにあったとき「裏切るべきではない」と怒り続けるのが非理性的。その状況で「そういう社員もいるだろう」と考えて状況評価を変えるのが理性的。さらに「でも裏切られないようにしたい」と考えを変えていく。つまり、「ねばならない」ではなく「したい」に考え方を変える。

 その転換のために、まず「ねばならない」と思っていることに対し疑問を投げ掛けてみる。本当に絶対に裏切るべきではないのか?裏切ったあいつがひどいのか?どんな事情があったのか?という具合だ。

 この作業を通し状況評価が変わってくると、感情もクールダウンしてくる。そこから「でも、今後は裏切られないようにしたい」と、再び前進していく気持ちに変えていく。そして、対策を考えられるようになれば挫折脱却だ。

野口 京子
野口 京子
野口 京子

文化女子大学 現代文化学部教授
日本健康心理学研究所所長。指導健康心理士、臨床心理士、米REBT研究所上級資格も持つ。「楽しそうに生きてる人の習慣術」(河出書房新書)など著書多数



“ドクロマーク”を自分の物語に取り込む

 経営者へのコーチングで数多くの経験を持つ鈴木義幸氏。挫折から復帰できる人の特徴について次のように語る。

 人生を時間軸で考えると過去、現在、未来があります。ここに「自分の物語」がある人は挫折に強い。過去の出来事と現在を「あの時、このことがあったから今があるんだ」と因果関係で結び付けられている。そして、今の状況から、未来の出来事を設定。最終ゴールを決め強く意識している。今の人生が第何章かが分かっていて、次の章、そしてその後という具合に物語を描き続けている人はタフな傾向にあります。

自分の物語

 しかし人生には、こんなはずじゃなかったと思う出来事が必ずあります。突然の部下の退社、彼(彼女)との失恋など公私にわたります。私はこれを「ドクロマーク」と呼びます。このドクロマークを物語に取り込むスピードが速いのも、挫折に強い人の特徴です。突然の部下の退社→優秀な部下が育って穴を埋めた、恋人に振られた→その後、妻に出会えた、といった具合に意味付ける。あれはなんだったんだろうね?どんな意味があったんだろうね?と、誰かと話してみることも効果があります。ただ、ドクロには大小あり、小ドクロは比較的取り込みやすいが、大きいものは難しい。これをいつまでも物語に入れられず、外に残ってしまう状態がトラウマです。

 トラウマをなくし、うまく物語を築くためにはビジョンが重要です。どんな会社を作り、何をしたいのか?といったビジョンです。儲けたい、世間を見返したいといった自己中心的なビジョンでも、強く抱けば物語は作れます。しかし、それでは目標を達成した途端、自分の存在理由や価値を見失い、結局幸せになれない傾向があります。

鈴木 義幸
鈴木 義幸
鈴木 義幸

コーチ・エィ副社長
米国の公的機関でセラピストを務め、帰国後コーチ21の設立に参画。管理職を対象にコーチング研修を実施。著書に『「ほめる」技術』(日本実業出版社)など



日経ベンチャー(2006年1月号)
日経ベンチャー(2006年1月号)より

 上記の記事「どん底からの復活!」は,『日経ベンチャー』2006年1月号に掲載された特集です。
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