特集:
連載企画「水害の世紀」(1)
東・阪・名を「都市型水害」が襲う
~大雨に下水道処理が追いつかない~

日経コンストラクション編
『水害の世紀』
(日経BP社発行、定価2000円)

 2004年に引き続き、2005年も全国で浸水被害が相次いでいる。梅雨前線の影響で、短期間に多量の雨がもたらされることが要因だ。例えば、6月27日から強い雨が降り続いた新潟県では、柏崎市の鵜川(うかわ)などで堤防が決壊。床上浸水と床下浸水の家屋が県全体で700棟を超えた。新潟県では2004年7月にも新潟・福島豪雨で、三条市や見附市、中之島町(2005年4月、長岡市に編入)を流れる五十嵐川や刈谷田川(かりやたがわ)などの堤防が決壊し、多数の浸水被害が出ている。

 さらに、7月に入って四国や中国地方を大雨が襲った。なかでも被害が大きかった山口県柳井市では、床上・床下浸水が700棟に達した。ただ、四国では今年に入って記録的な少雨が続いている。例えば、高知県の早明浦(さめうら)ダムでは7月半ばに貯水率が50%まで回復したが、水不足解消には至っていない。

 2005年の日本は、水不足に悩まされる地方がある一方、豪雨災害に見舞われる地域もあるといったまだら模様の状況だ。しかし、台風の上陸シーズンを秋に控え、今後も浸水被害はなくなりそうもない。

 水害が頻発しているのは日本に限らない。世界をみても、台風やハリケーン、豪雨などが猛威を振るっている。水害の世紀が幕を開けたといっても過言ではない。

 日経コンストラクションでは、日本で浸水被害が多発し始めた状況をとらえ、 7月11日に『水害の世紀』というタイトルの書籍を発行。2004年に日本で発生した浸水被害などの記録を、カラー写真や被災者の証言という形でとどめる。さらに一歩踏み込んで、災害発生のメカニズムや災害から身を守るためのポイントもまとめた。

 この連載企画では、『水害の世紀』の一部分を紹介しながら、水害はどういった場所で発生する確率が高いのか、浸水被害からどうやって自分や家族の命、さらには持ち家を守っていけばいいのかを解説していこう。(日経コンストラクション編集)

監修/森野美徳 文/日経コンストラクション編集部
2005年7月22日

【PART1】
大雨に対処できない都市の下水道処理能力

 2004年は豪雨や台風によって水害が全国で多発した。都市部では道路や鉄道が冠水し、交通機能が遮断され、繁華街や地下街では浸水被害が相次いだ。こうした都市型水害は、局地的な豪雨による雨水の急増に、都市の排水処理機能が追いついていないために起きる。下水道の処理能力不足が大きな問題となっているのだ。まずは、下水道による浸水対策の動向を追ってみよう。

2004年10月9日午後4時ごろに台風22号が伊豆半島に上陸し、東海地方から関東地方南部にかけて各地で総降水量300mmから400mmの大雨を降らせた。東京では冠水によって道路の通行規制や地下鉄の運転中止が相次ぎ、帰宅ラッシュと重なって大きな影響が出た。写真は激しい雨で冠水した東京都文京区の外堀通り(写真:毎日新聞社)

 東京や大阪をはじめ、大都市の中心部でヒートアイランド現象が問題になっている。地表面が舗装で覆われることなどによって、都市の周辺部より気温が高くなる現象だ。都市が舗装で覆われた影響は、ヒートアイランド現象だけにとどまらない。降雨時に雨水が一気に下水道に流れ込むようになり、地下を走る下水道管には大きな負荷がかかるようになっている。

市街化の進展で、短時間に大量の雨水が流出

 地表に土が多かった市街化前には、雨水は地中に浸透していた。しかし、市街化によって地表がコンクリートやアスファルトなどで覆われると、短時間に大量の雨水が流出するようになった。

 本来、都市部では雨水は下水道を通して川や海へと流れる。しかし、大雨が降ると下水道が大量の水をさばき切れなくなり、浸水被害が起こる。また川が増水し、下水道の水を流せなくなり、雨水が地表にあふれ出ることもある。

 これらの都市型水害は「内水氾濫(ないすいはんらん)」と呼ばれ、堤防を越えて川の濁流があふれ出す「外水氾濫(がいすいはんらん)」とは区別される。

 水害の被害額でみると、内水氾濫は全国では約半分、東京都では80%もの割合を占める。人口や資産が集積する都市部では、内水氾濫による被害が大きな課題だ。

 東京都において、これまで整備されてきた下水道は、1時間当たり50mmの降水量に対応する計画だった。しかし、雨水の浸透率が低下し、1時間50mm以上の豪雨が多発する現在、雨水の流出量に対して下水道の対応能力は限界を超えている。

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