熱中症 早めの対処が死に至る危険を防ぐ

猛暑ではじっとしているだけでも熱中症になる!?

 空調服という、暑い夏を快適に、しかも安心して過ごせる“ツール”を紹介したが、猛暑が続く状態で人間はどうなるのだろうか。

順天堂大学医学部衛生学教授の稲葉裕氏。バイオクリマ研究会の幹事も務める。「生気象学」の立場から熱中症を研究している。

 一般的にスポーツや外回りの仕事などに夢中になっていると、多少暑くても“切りのよい”ところまで水も飲まずにとかく頑張ってしまいがちな日本人。ギラギラと日が照りつけるグランドで活躍する夏の選抜高校野球で球児たちの姿を見ると、「一生懸命に頑張っているなあ。どちらが勝っても、負けても両方応援したい」などとは思っても、それ以外については関心がない人が多い。

 「水分を補給せずに暑い環境下で長時間活動すること。それが一番危険」と指摘するのは、順天堂大学医学部の稲葉裕教授だ。

 稲葉教授は大気の物理的、化学的環境条件が生体におよぼす影響を解き明かそうという「生気象学」の立場から熱中症を研究している。

図3:熱中症発生温度の目安
危険
32℃~
じっとしているだけでも発生する危険があります。外出を控えたり、暑熱対策を積極的に講じる必要があります。
厳重警戒
27~32℃
発生数が最も多い水準です。発生の予防策を十分にとる必要があります。
警戒
24~27℃
労働現場や日常活動時にも発生しやすくなります。十分に注意する必要があります。
注意
~24℃
マラソン等の激しい運動では発生する危険がありますので、注意を怠らないでください。

 稲葉教授は次のように続ける。

 「そもそも『熱中症』というのは通称であって、一般的には暑熱環境によって生じる健康障害のことを総じて『熱中症』と呼ぶことが多いようです。暑熱障害には軽いものから順に『熱失神』、『熱疲憊(ねつひはい)』、『熱痙れん』、『熱射病』などの症状があり、狭義では熱射病イコール熱中症とされています。

 いずれにせよ身体がダルくなって思うように動かない、筋肉が痙れんする、頭痛、めまい、動悸など、自分にとって普通でない症状が出てきたら、危険な状態だと思ってよいでしょう」。

 熱中症は、熱や湿度がもたらす脱水症状により、脳内の体温調節中枢が壊れることで発生するという。これがさらなる脱水症状をよんだり、体温が39~40℃の高熱にまで急激に上がるなどの症状を引き起こすのだ。

「水分」プラス「塩分」の補給が絶対

 早めに対処すればほとんどの熱中症はおさまるが、最悪の場合は死に至るケースもある。では、具体的にはどのように対処すればよいのだろう? 稲葉教授に聞いてみた。

 「とにかく体内の熱を冷ますことが大切なので、木陰など涼しい場所で休みましょう。といってもエアコンの効いた部屋で急激に冷やすのは、身体への負担も大きいので避けること。

「熱中症予防には水分摂取と十分な休息で体温を下げることが大切」と語る稲葉教授

 もうひとつは水分の補給なんですが、脱水状態にあるときは水分のみならず、体内の塩分も失われていますから、水だけでは逆に危険です。塩分のない水が身体に回ると、『脱塩症状』による痙れんを起こすことがあるためです。ですから、水分補給にはスポーツドリンクが最適といえます」(稲葉教授)。

 このほか首の後ろ側、脇の下、ももの内側など、太い血管が通っているところを濡れた手ぬぐいなどで冷やしてやることも効果的とのこと。体温の上昇と共に血液の温度も上がっているため、血流量の多い太い血管部を通して血液全体を冷やすというわけだ。

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