【今週のハイライト】ライブドア問題から見える株式市場の危うさ(3)
リスク管理の発想が乏しい東証役員
昨年12月にはジェイコム株の誤発注事件なども起きたが、その後、東証は売買システムの能力を900万件にまで増強した。
こうして注文の処理能力はアップしたのだが、清算処理を行う清算システムの増強が追いつかなかった。清算システムは1日分の約定データをいったんハードディスクに蓄積するのだが、その容量によって処理能力が決まる。
このシステムは日立製作所のメーンフレームによって動いているが、昨年10月には約定の処理能力を450万件にアップした。だが、その程度ではライブドアというハリケーンには対応できず、最終的には438万件まで達したことは冒頭に記した通りだ。
実は1月18日の記者会見で、東証の深山浩永執行役員は注文件数に対して何割ぐらいが約定件数になるのかという質問にこう答えている。
「私どもの経験則で言うと、50%を若干超えるか超えないかという程度。過去はそうでした」
これに対して、記者が「今日はどうでしたか」と突っ込むと深山氏はこう応じた。
「56%ぐらいまで上がりました」
市場のプロであれば何か異常が起きたとき60%近くまで約定件数が増える可能性を考え、リスクヘッジをしておくのが当然ではないだろうか。売買システムの能力が900万件だったのだから、その6割(540万件)まで約定処理能力を上げていたならば、500万件程度までは対応できたはずだ。ライブドア・ハリケーンをこれで回避できたかどうかはいまとなっては分からないが、東証役員にリスク管理の発想が乏しいのに改めて驚かされる。
時代遅れの清算システム
東証はその後、1月22日には清算システムの処理件数を500万件まで増強し、売買停止基準を450万件に変更。今年5月中には売買システムの注文処理能力を1200万件、年内中には1400万件、そして清算システムの約定処理件数を5月中には700万件まで増強すると発表した。
今後、ミスのないようにシステム増強してもらいたいものだが、それで安心というわけではない。ニューヨーク証券取引所では1日の約定処理件数が最大2000万件。また、注文の処理能力は“1時間で4680万件”という報道もあり、東証のはるか先を行く。早め早めに処理能力を上げてきたことでニューヨーク証券取引所は信頼を得ており、システムの重要性に対する認識が東証とは違うのだろう。
今年1月22日のasahi.com(朝日新聞)は、日本の清算システムが「約10年前に導入したコンピュータを使い、当初の耐用期限は04年後半だったことが分かった」と書いている。
IT技術者の木走正水氏(ペンネーム)のブログ「木走日記」では、「日本の金融業界においては安定感のあるメーンフレームを耐用年数を超えて長期に使用することは常識化している」とするとともに、「東証の悲劇は、そのような日本国内ローカルの遅れた慣習を放置したまま、アメリカ主導の国際金融市場という最先端のグローバルな環境に、旧態依然とした東証システムをさらしてしまったことなのでしょう」と述べているが、まさに正論といえよう。
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