【今週のハイライト】大方のマンションはきちんと作られていることを認識しよう! ~耐震強度の偽装問題は偶発的事件か、業界の構造問題か?(2)~

これから買う方

・パンフレットで強調されているのは何か

 構造部分や耐久性など、建物の本質的価値である部分を中心に説明されているパンフレットが理想。設備仕様/意匠など、表面的な部分を強調し、本質部分は一般的な説明に終始している場合、少なくとも本質部分に集中して力を注いでいる物件ではないといえる。いくつかのパンフレットを比較することで、デベロッパーごと、またマンションごとのカラーが見えてくるだろう。

・不安感がどうしてもぬぐえない場合は、購入そのものを取りやめる勇気を

耐震計算偽造・解体されるマンション
耐震性に問題を指摘され、解体される建設中の分譲マンション「ラ・ベルドゥーレ 白井駅前」(千葉県白井市)
(写真提供:時事通信。なお同写真およびキャプションについて、時事通信の承諾なしに複製、改変、翻訳、転載、蓄積、頒布、販売、出版、放送、送信などを行うことは禁じられています)

 不安感が払拭できない中で、大きな買い物の決断をすることは懸命ではない。購入者が分断されている新築マンション購入の段階で、犯罪的悪意を見抜くために、過大な費用と期間を要すること、不信感を拭うためにそこまでするというのは、バランス感覚としてどうだろうか。今一度、熟慮したいものである。

・第三者の意見を聞くこと

 マンションに詳しい友人/知人、不動産コンサルティング会社など第三者の意見を聞き、偏りのない判断、検討事項に不足のない判断を心がけたい。ここで言いたいことは、必ずしも専門家の知識の必要性を説きたいわけではない。

 マンション購入前の購入者はある意味「興奮状態」にある。マイホーム購入という「夢」の実現に対する興奮。一方では、「大きな買い物で絶対に失敗できない」「多額のローンを抱える不安」などからくる興奮。プラスにもマイナスにも、感情が大きく揺れ動いている状態だ。このとき、第三者の意見を聞いてみることは、気持ちをクールダウンさせる効果がある。少し冷静になって、落ち着いた段階で、それでもなおその物件がほしいのであれば、慎重にその物件を購入すればよいだろう。

・“管理力”の形成と維持に努めること

 購入後の“管理力”が有事に力を発揮する。マンション住人で結成する管理組合内で、お互いを思いやった建設的な話し合いができなければ、マンションにとって良いことはなにもない。平時における、なにげないマンション内のコミュニケーションや、管理組合の円滑な運営を大切にすることは、有事に「管理力」を発揮できる原動力となり、資産性の保全につながる。なにより、円滑なコミュニティー運営がなされているマンションは、住んでいても快適であろう。

・より安全を期すなら中古マンション

 中古マンションは、竣工図書をはじめとする各種データはもちろん、建物現物が存在すること、管理組合の運営の状況、住民同士の平時のコミュニケーション等、 現状を確認した上での決断が可能という、大きなメリットがある。判断材料は、圧倒的に中古マンションのほうが多いのだ。

 今回ほどの犯罪的悪意に基づくケースは、日本国内に現在450万戸超存在するマンションの中でもごく一部であろうし、不安がいたずらに広がることを懸念している。不動産・建築に携わる私たちが、この問題を全体の責任としてとらえ、地道な情報開示と信頼回復に努めると同時に、マンションにとって本当に大切なのは何かということについて、一般ユーザーの意識を啓蒙していく努力が求められるであろう。

 本稿を、多くの業界関係者も見ていることだろう。この問題の意味を、単なる責任追及や企業別のリスクヘッジなどに留まるなど、矮小化して終わらせることなく、より大きく、かつ建設的な方向性を持たせようではないか。今を生きる我々の手で、日本の「人と不動産の関係」を、より幸福にしよう。そしてその意思を、必ずや未来へと継承しよう。


リンク集

ニュース集
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/NA/news_taishin/

特集記事集
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/free/NEWS/20051125/126269/

参考リンク
耐震強度問題 あなたのマンションは大丈夫か?

長嶋 修氏長嶋 修(ながしま・おさむ)氏

不動産の達人 株式会社さくら事務所 代表取締役社長兼CEO
経済産業省 住宅産業関連ニュービジネス支援策検討委員会 委員

 不動産デベロッパー支店長として、幅広く不動産売買業務全般に携わる中で、業界の不透明な慣行、販売手法や哲学に疑問を感じるように。

 一般ユーザーにとって“本当に安心できる不動産取引・不動産業界が真にあるべき姿”を模索するうち、“購入者のみの立場に立つ不動産のプロフェッショナル”が必要であると確信、起業する。

 1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティングを行う消費者エージェント企業「さくら事務所」を設立。同社は不動産に関するプロフェッショナルの精鋭集団。

 以降、様々な活動を通じて「購入者のみの立場に立つ完全独立系不動産コンサルタント」としての地位を築く。

 マイホーム購入・不動産投資の第一人者として、著書、マスコミ掲載・出演、セミナー・講演等実績多数。

 主な著書に『失敗しないマンション選び』『絶対に後悔しない一戸建て選び』(いずれも日本実業出版社)、『住宅選びこれだけ心得帖』(日本経済新聞社)、『住宅購入学入門-いま、何を買わないか』(講談社)などがある。

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