【今週のハイライト】耐震強度の偽装問題は偶発的事件か、業界の構造問題か?(1)
「売れるマンション」と「良いマンション」は、ちがう
まず、「“売れるマンション”と“よいマンション”が、必ずしもイコールではない」という現実がある。
ここで私たちがいう「よいマンション」とは、一言で言えば「質実剛健な物件」を指す。
これは「構造躯体・耐久性・可変性などに重きをおいた物件」であり、「メンテナンス性に配慮された物件」であり、「管理のしやすい物件」だ。
まずデベロッパーは「売れるマンション」を造ろうとする。消費者が求めるマンション企画を志向する。それそのものは、資本主義経済社会では当然のことともいえる。
そこで、想定購入者にアンケートを行って、その傾向を探ってみたりする。
ところが、消費者である私たちは、実はマンションのことをよく理解していない。
社会問題を突き詰めていけば大概「教育の問題」に突き当たるが、私たちは、「お金をはじめとする金融全般」「不動産に関する知識」を得る機会がないまま、社会に出た。私たちが受けてきた教育は、これは言葉は悪いが「大量生産型偏差値教育」であって、社会に出ると必要な、実用的な知識を吸収する場面が与えられなかった。
だから例えば、消費者は、
「どんなマンションがいいですか?」と聞かれれば、
「うーん、そうねぇ、キッチンはイタリア製がいいかしら」
「お風呂にはミストサウナがついてるほうがいいかしら」
「デザイナーズマンションがいいわ」
など、建物の本質とは関係のない、設備仕様や内装・外観に言及する。
よって供給側は、必然的にそこに力を入れた物件を企画し、その分、それ以外のところは必然的にエネルギーやコストを注ぐことはできない。そうしなければ、ライバルの物件に負けてしまう。
現在、マンションの販売は好調であるとされている。しかし、販売の激化は用地仕入れ価格の高騰を招き、鉄鋼をはじめとする資材価格の高騰もあいまって、原価は上昇するばかり。
一方で、販売総額(グロス)を上げることはできないため、実は実質的な値上がりはすでに行われている。それは、「販売面積の圧縮」や「プランの簡略化による戸数稼ぎ」という手法で行われている。
長谷工が1970年代に開発したとされる、いわゆる「田の字プラン」は、一棟あたりの販売戸数を稼ぐのに最適な効率を生むプランニングだった。戸数が多ければその分、売り上げ・収益は増大するからだ。数年前、間取りプランの無個性化・可変性に劣る点などが言われ始め、一時期、田の字プランはフェードアウトするトレンドになったのだが、最近になって再び「田の字プラン」が各方面で復活、これまでの文脈は何事もなかったかのようだ。
また、マンション販売専業のデベロッパーの数が圧倒的に増大したのも、
「後戻りできない」
「途中で止まれない事業構造からチキンレースをやめられず」
という流れを生み出している。
・競争は厳しい
・コストダウンの圧力は強い
となれば、しわ寄せが来るのはどうしても消費者の関心の低い部位。そしてまさにそれが、今回問題になり、かつ建物にとって最も重要である「構造」「耐久性」であり、あるいは「可変性」「メンテナンス性」「管理のしやすさ」なのだ。
マンションデベロッパーの中にいる人たちの中でも、心ある人、志の高い人、使命感の高い人は当然、このような現状を良しとはしていない。本来売りたい物件と、実際に造っている物件はイコールではない。
資本主義経済社会におけるどのような仕事も、基本的には、「現実と理想とのせめぎあいの中で、妥協点をどこにおくか」という話だが、組織にいる一人一人の力は弱く、多くは全体の流れに流される。
本来的には、マンション建設にふさわしくないと思える土地、以前であれば検討段階で外れていた土地を、再び訪れると、そこにマンションが建っていたり・・・。
土地の有効利用・有効活用ととらえればそれ自体は素晴らしいことだが、とにかく用地仕入れに苦慮する現在、どのような土地でも何とかして商品化しようという流れがある。
そのような用地を、もし自分たちが仕入れなかった場合は、ライバルのデベロッパーが購入して商品化するだろう。ライバルも事情は同じなのだから。
だから、なかば仕方なくその用地を仕入れ、仕方なく設計をし、仕方なく建設をし、それが消費者の手元に届く。
このような状況の中で、どんな時代が構成されていくのか。業界人の意識がだんだん変化していく日本の「人と不動産の関係」。これが問題の本質なのだ。
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