リポート:
【今週のハイライト】
耐震強度の偽装問題は偶発的事件か、業界の構造問題か?(1)

ナビゲーター:長島 修氏(さくら事務所代表)
2005年11月28日

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魔女狩りの嵐で、業界全体が機能停止状態に

 耐震設計偽造問題が、世の中を席巻している。

 我々人間にとって、「住まい」という器の安全性が脅かされるということは、心理学的にもより原始的な欲求を脅かされることとなる。いま、生命の危険を脅かす強い不安感が幾何学級数的に社会に蔓延している。TVのどのチャンネルを回しても「偽造」「偽造」のオンパレードだ。

 問題のマンションにお住まいの方は、精神的にも相当な負担がおありだろうし、現実の対応は、本当に大変だと思う。

 また業界内では、この件が一気に社会問題化したことで、各社とも対応に苦慮している。

 「とにかく不安だから契約しない」など、事件とは直接的な関係のないところまで不安が飛び火、販売の現場は大混乱。また、マンションの構造設計を担当した設計者は、デベロッパーや設計の元請会社などから、過去数年にわたる物件の構造設計について説明を求められるなど、本業に手がつかないほどの状況だ。

 いま、不動産・建設業界全体が不審の目で見られている。非常に悲しいことだ。この事件が今後もし、他の建物や企業に引火する場合は、その度合いが大きい程、不動産・建設業界全体に対する不信感が拭われる日がどんどん遠くなるだろう。

 業界人などが「想定外であった」と発言しているのは、まさにその通り。誰も、犯罪的悪意を前提として、そこまで疑念を持って仕事はしていない。

 もちろん件の当事者・関係者は悪い。悪いに決まっている。通常の想像力が働けば起こりえないことだからだ。事実が明らかになるにつれ、責任の所在などについては徐々に絞り込まれてくることだろう。

 私のところには連日連夜、TVや雑誌などの取材が殺到し、このたびに取材に応じコメントしているのだが、現在のメディアの方向性は、圧倒的に「悪者探し」。

 「誰が一番悪いのか」「責任は誰にあるのか」と、責任転嫁と怒りをぶちまける報道が繰り返される。なんともアンハッピーな、つまらない世の中になったものだ。不安と不審の社会。正直なところ、現在の悪者探し的風潮の中で取材に応じコメントをすることには非常に抵抗がある。抵抗はあるけれども、断るのもどうかと思うし、私は私の持論をお話している。

構造設計者は、本来真面目な人間しか務まらない

 構造設計を専門とする人間には、いわゆる「まじめな人間」が多い。構造設計は、細かく地道な作業をコツコツと丁寧に続ける作業であるから、また、構造設計者は立場的に、構造という、地味ではあるがもっとも大切なところを「守る立場」にある。だからこそ、まじめな人間でなければ務まらないし、コツコツと地道な努力を、丁寧に積み重ねることのできる人間にこそ向いている仕事だ。

 彼らは今回の件で、構造設計という、普段はあまり陽のあたらない仕事がこのような形でいきなりクローズアップされ、 しかもそこに不審が集中してしまうことについて、大変不本意に感じていることと思う。ほとんどの構造設計者は、日々誠実に仕事をしているのだから。

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