リポート:
アスベストは自分で監視し対策を

あらゆるところに潜む「石綿リスク」をどう避ける?

 アスベストを扱う工場の従業員と周辺住民に、中皮腫や肺ガンで亡くなる人が続出した。
 オフィスや住宅など身の回りには、アスベストを使った製品があふれている。
 我々が自分の身を守るためにはどうしたらいいのだろう。

文/柳生譲治
2005年10月21日

大阪府立高で石綿除去 アスベストの除去作業
教室の内部全体をビニールシートで覆い、飛散防止剤を吹き付けながら天井裏のアスベストを除去する作業員
写真提供=共同通信社

 アスベスト(石綿)は天然鉱物繊維で、太さは髪の毛の約5000分の1。耐火性や耐熱性、電気絶縁性などに優れ「魔法の鉱物」と呼ばれてきた。我々の生活のありとあらゆるところで使われている。

 ところが今年6月、大手機械メーカーのクボタが、同社の元工場従業員にアスベスト被害者がいたことを発表してから、アスベストの危険性が次々に報じられてきた。7月15日に、経済産業省はアスベストが原因の疾患による死亡者は374人と発表したが、各メーカーが発表する死亡者はさらに、日々増え続けている。一転して「悪魔の鉱物」になってしまったのだ。

 アスベストがガンや中皮腫を引き起こすことは、1960年代から経験的に知られていた。それなのに政府が先頭に立ってアスベスト使用を禁止できなかったことは、これまでの公害と同じ構図だ。

アスベストで数十万人死亡

 「アスベスト問題は、厚生労働省と経済産業省、環境省の狭間にあったため、役所はどこも自ら解決しようとしてこなかった。『不作為』の罪だ」と訴えるのは、石綿対策全国連絡会議の古谷杉郎事務局長だ。同会議は、1980年代から「アスベスト問題は、国民全体の健康問題だ」として国に対策を取るよう働きかけてきたが、お役所体質の壁に阻まれてきた。

 危険な物質の「禁止」を誰も宣言してこなかった結果、30~40年も経ってからガンや中皮腫を引き起こす「時限爆弾」が、ありとあらゆる分野に仕掛けられた。

 また、神奈川・横須賀の米軍基地作業員の石綿じん肺訴訟に長く携わってきた古川武志弁護士は、メーカーの責任も指摘する。

 「たとえ法令で認められた範囲で使用してきたといっても、企業が免責されることにはならない。現実にアスベストで健康を害するケースは数多く、石綿被害を予見できたはず。被害を防ぐ対策を講じなければ民事責任が生じる」

 早稲田大学の村山武彦教授は、2040年までに日本で10万人が中皮腫で亡くなるという恐ろしい予測をしている。しかも、これはアスベストとの相関関係が高い「男性の胸膜中皮腫」に限定した数字にすぎない。

 「中皮腫以上に多いと言われるアスベストによる肺ガン、腹膜中皮腫、さらに女性がそれらの病気になるケースまで含めれば、死亡者は数十万人に及ぶ可能性もある」(中皮腫・じん肺・アスベストセンター代表の名取雄司医師)という。

 アスベストは我々が日頃出入りするビルや住宅のほか、自動車のブレーキパッドなどにも使われてきた。アスベストを吸ったことのない人はいないはずだ。ガンや中皮腫発症の確率は吸った量と時間に比例するが、「低濃度だから大丈夫」という許容値は設定できない。

 とりわけ中皮腫は重病である。肺ガンは抗ガン剤や外科手術などで治療することもできるが、中皮腫は根本的な治療法がない。中皮腫は肺や心臓などを包む胸膜や腹膜を覆う中皮にできるガンの一種で、発病後の生存期間は1~2年。一般的なガンは原因を特定することが難しいが、中皮腫は発症の原因がアスベストにあると見てほぼ間違いないとされる。

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