地震に耐えられる家とは?木造住宅の耐震補強が守る、家族の命(後編)
耐震と共にリフォームを見直そう
そこで木耐協の西生氏が提案するのは、リフォームと一緒に行う耐震補強工事だ。補強工事に掛かる費用の割合は、2割が解体、4割が補強そのもの、残りの 4割が元通りにするための復旧、となっている。つまり、住宅をリフォームするタイミングに合わせれば、耐震補強は解体と復旧を除いた4割のコストで済ませることが可能なのだ。
さらに、リフォームと同時に行うことで他の利点も生じる。例えば、補強した壁をクロスで仕上げれば単なる壁にしかならないが、リフォームなら壁の裏板を流用してシステム収納家具にしてしまうことで、収納と転倒防止に役立つ、といった具合だ。
しかし、ここにも少なからず問題はある、と西生氏は指摘する。
「リフォームとの合体は、耐震補強を普及させる大きなカギです。ただし、今のリフォーム業者は(耐震補強に関する)知識を持っていないことが多いため、耐震診断を行っていません。これはリフォーム業界の抱える大きな問題点でもあります」(西生氏)。
リフォームの場合、建設業の許可がなくても500万円未満の工事はできたり、建築士のいないリフォーム会社が工事を行えるといった現状では、依頼者の望む通りにリフォームを行った後、構造面で安全の保証を誰も担保しないことが起こり得る。依頼者も、まさか「窓を大きくしたい」という自分の注文が、壁のバランスを悪くし、結果的に地震に対して“弱い家”になっているなんて想像もしない。「今は、リフォームする工事者側も、依頼する消費者側も、あまり耐震に関する知識がないままマーケットが成り立っている、危険な状況なのです」と西生氏は指摘する。
リフォームを行う際、「こんなキッチンにしたい」「こんなリビングがいい」という家族の夢を叶えることも大事だが、構造面を確保しているおくことは“地震国ニッポン”における前提でもある。
「そもそもリフォームというのは、新築以上に工事のスキルが必要とされています。建築した際の設計図面がなくなっている場合や、経年劣化している可能性があるからです。ところが、実際にはリフォーム事業者はそこまでのスキルを持っていない場合が少なくありません。またリフォーム事業者も、新しい機能の付いた使いやすいバスユニット(お風呂)を“売る”ために、その家全体の構造面や耐震性までみようなんて考えないでしょう。まるで“物販”のようなリフォーム業者が横行している実状は、大きな問題だと思います」(西生氏)。
昔に比べ、住宅産業の市場があまりに拡大しすぎた結果、このような状況になったともいえる。ただし業界としては、そのような行き過ぎた方向からは回帰しようという流れがあるそうだ。われわれ消費者としても、「量販店で家電製品を買う」ような安易な感覚でのリフォームは、考え直すべきだろう。
耐震化が浸透する世の中へ
耐震診断や耐震補強の費用については、阪神・淡路大震災後に施行された『耐震改修保進法』(※1)を受け、融資制度や補助制度を設ける自治体が増えてきている。
今年6月、国土交通省は、大規模地震に備え中古住宅の耐震改修をより進めるため、改修にかかった工事費の一定割合を所得税額や住民税額から控除する税制の改正を、来年度の税制改正要望事項に盛り込む方針を固めた。これらの制度は、これからもっと本格化していくだろう。同時に、高齢者には老朽化した家を楽にリフォームすることができる『リバース・モーゲージ』(※2)のような仕組みがきちんと確立されることも必要だろう。
※1 耐震改修保進法:地震による建物の倒壊等の被害から人命や財産を守るため、1995年(平成7年)10月に制定された。現行の耐震基準に適合しない特定建築物(多くの人が利用する一定の建築物)の所有者には、耐震診断と耐震改修を行う努力義務を課している。
※2 リバース・モーゲージ:現金収入の少ない高齢者を対象とした制度。居住中の持ち家(一戸建て・マンション)を担保に、自治体・民間金融機関から年金型の生活資金融資を受ける仕組み。

『耐震改修促進法』を受けた、耐震診断・補強に対する自治体の取り組み(2003年12月現在/木耐協資料より抜粋)
※上記は一例なので、詳しくは各自治体にお問い合わせください。
「家は私財であると同時に、公共財でもあります。地震がきて建物が倒れれば、例えば道がふさがって人に迷惑をかけてしまうからです。そう考えると、安全性を確保しておくことは、個人レベルの問題ではなくなってきます。車に車検(編集部注:正式名称は『自動車検査証』)があるように、家も定期的にチェックを受ける『家検』のような制度があってもいいはずです。さらに、定期的な検査をきちんと受けていれば固定資産税が安くなる、などの仕組みも必要ではないでしょうか」(西生氏)。
さらに西生氏は続ける。「防災対策のみを強調するのでは、耐震化はなかなか普及しません。耐震工事の効果を『地震が来て初めて分かる』のではなく、減税のような別の形で提示していくことによって、悪質なリフォーム工事を予防することにも役立ちます。検査を通らないような工事をすればクレームになるので、これまでのようないい加減なことはできなくなるはずです」。
政府は地域防災戦略として、2003年には75%だった住宅の耐震化率を今後10年間で90%に引き上げることを目標に掲げた。
天災は避けられなくても、被害を最小限に抑えることは可能だ。個人レベルでできる対策が、ひいては多くの人々の命を救うことにもなる。住宅の耐震補強は、最優先事項のひとつと考えたい。
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