セキュリティ人材の“実践”教育が始まった<インタビュー>

相反する“安全”と“便利”のバランス感覚を養う

──高度なセキュリティに関する人材の理想像とはどのような姿でしょうか?

齋藤:
 一言でいえば、“安全と便利のバランス感覚を持った技術者”だと考えています。

 ネットワークや情報通信に限らないと思いますが、安全と便利は常に相反します。便利さだけを追求すれば、かならずリスクが増加します。安全性ばかりを追求すれば、不便で使い物にならないものになってしまう――必ず矛盾する、そういうもののバランスを取れるかということです。

 実社会で製品やサービスを提供するときには、必ず“安全と便利の落としどころ”を冷静かつ論理的に見極めなければなりません。その判断を誤れば、社会全体に大きなリスクを背負わせてしまうことになるかもしれませんし、逆に、現在の便利な社会生活が不便になってしまうこともあります。

──では、情報セキュリティの分野において、そういった“適切な判断”を下すためには、どのような知識や経験が求められるのでしょうか。

齋藤 和典 氏

齋藤:
 大切なのは、「セキュリティ技術」と「現場における経験」と「マネジメント能力」の3つでしょう。当然、セキュリティの技術に関する知識がなければどうしようもありませんし、知識は現場で生かしてこそ“血”となり“肉”となります。そのためにも、やはり現場における経験が必要なのです。

 しかし、現実の社会ではなかなかセキュリティに関する体験や実験を行うことはできません。一歩間違えば、それはハッキング行為となってしまったり、悪さをするプログラムを社内や社外にばらまくようなことになってしまったりするからです。

 その点、このセンターで用意している実習用のシステムは、自由に体験ができる実験場そのものだといえます。しかも、その実験場には、実際に乗っ取られたシステムやハニーポットで捕獲した検体が入っていますので、リアルな体験ができます。

 一方、マネジメント能力に関しては、やはり専門家に話を聞くのが一番いいのではないでしょうか。このセンターでも、様々な分野の専門家をゲスト講師として招いていますが、特に法律関係などの話は、普段、話を聞くチャンスが少ないこともあって、とても好評です。

 そういう実習や講義を通して、現場で難しい判断に迫られたときに「どう判断するか」という基準やヒントを得ていってほしいと思います。

齋藤 和典(さいとう・かずのり)氏

株式会社セキュアウェア 代表取締役

【プロフィール】
1984年 大阪大学理学部物理学科卒業
1986年 大阪大学大学院理学研究科物理学専攻前期課程修了(理学修士)
1989年 大阪大学大学院理学研究科物理学専攻後期課程単位修得退学
1998年 大阪大学医学部医学科卒業
2001年 大阪大学サイバーメディアセンター客員助教授(2006.3まで)
2004年 株式会社セキュアウェア代表取締役
2006年 大阪大学大学院情報科学研究科特任助教授(2007.3まで)

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