さらば!迷惑メール(後編)
第2部
迷惑メールはこうかわせ

米国編:
規制法盾に業者提訴相次ぐ

 米国の迷惑メール規制法、通称「CAN-SPAM法」が2004年1月に施行されてから1 年以上が経過した。しかし、さまざまな調査会社のデータを見ても、迷惑メールの数が昨年より顕著に減ったという結果は見当たらない。新法の効果はあったのか。

 「実際に迷惑メールの数が減ったかどうかを判断するのは極めて難しいが、CAN-SPAM法は我々に迷惑メールを取り締まる強力な武器を与えてくれたのは事実」と語るのは、米連邦取引委員会(FTC)で迷惑メール対策を担当するマイケル・グッドマン弁護士。日本の公正取引委員会に相当するFTCは、米国の迷惑メール対策で中心的な役割を果たす政府機関だ。同氏によると、FTCはCAN-SPAM法ができる前から消費者をあざむく行為を禁止したFTC法の下に迷惑メール送信者たちを提訴することもできた。しかし、同法によって「迷惑メール1件当たり最高1万1000ドルの賠償金を請求できるなど、罰則を科しやすくなった」という。

 実際にFTCがCAN-SPAM法の施行後に迷惑メール業者を提訴した民事訴訟はこれまでに8件。基本的には被告が迷惑メール行為を中止し、賠償金を支払う和解案での決着を目指すのがFTCの方針で、既に和解した案件もあるという。

 FTCはCAN-SPAM法の定めに基づき、昨年は性的な内容を含んだ広告メールに関する規制と、メールが広告であることを明記する方法などを定めた具体的なルール作りを完了。現在は同法の細かい内容について「改正するべき点や、新たな規制を加えるかどうかを検討している段階。年内にも新規制法がまとまる予定だ」(グッドマン氏)。

自己破産に追い込む

 今年3月下旬には、かつては悪質な迷惑メール業者の世界番付でトップ5に入っていた米コロラド州在住のスコット・リクター氏と同氏が経営する会社が自己破産を申請した。同氏らは米マイクロソフトと米ニューヨーク州検事当局をはじめ、複数の方面から提訴を受けているが、これらの訴訟に対応するための膨大な法的費用が破産の理由という。迷惑メール対策に取り組む非営利団体の「スパムハウス」(本部は英国)によると、欧米の迷惑メールの8割は約200 社の主要悪質業者に由来する。これらを排除するための法的な動きが加速すれば、迷惑メールの数が減ると期待されている。

 ただ、「法的な対応だけでは問題を解決できない」(米マイクロソフトのサマンサ・マクマナス事業戦略マネジャー)という見方が米国では主流。マイクロソフトではメールの発信元に偽りがないかどうかを認証できる「Sender ID」技術を提唱。米ヤフーと米シスコシステムズもそれぞれ、「Sender ID」に比べてより厳密に迷惑メールの発信元をチェックできる認証技術を提唱している。「現在はヤフーとシスコの技術を融合できるよう、両社で協力を始めたところだ」(ヤフーの迷惑メール対策プロダクトマネジャーのマイルズ・リビー氏)。また、米IBMも独自の新しい認証技術を発表したが、いずれもまだ導入は始まったばかり。

 政府機関のFTCでもメール発信元の認証技術が迷惑メール対策に不可欠であると認識しており、「民間企業が有効な技術開発とその導入に積極的に取り組むよう、促していく方針」(グッドマン氏)だという。

(影木准子=米シリコンバレー支局)

●米国における迷惑メール規制法(CAN-SPAM法)施行後の主な関連訴訟 【クリックで拡大】

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日経パソコン

日経パソコン(2005年4月25日号)より

上記の記事「さらば!迷惑メール」は、『日経パソコン』2005年4月25日号の特集から掲載したものです。
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