進化するバイオメトリクス――(5)顔認証

ハイセキュリティエリアの入退管理から自販機まで

 顔照合技術セキュリティシステム「FacePass(フェイスパス)」(2001年発売)で豊富な実績を持つ東芝は顔認証システムのユーザーについて「比較的多いのはハイセキュリティを要求される金融機関や病院そして一般のオフィスビル。照合性能に関してとくにクレームが来たことはない」(静野氏)という。最新型のスマートコンシェルジュについては、ダイナミックレンジの広いカメラを採用したり、後処理で照度を補正するアルゴリズムを追加するなどで強化を図っている。

図8:顔認証機能を搭載したNECのPC「LaVie L」。液晶画面の上部にWebカメラを搭載 図8:顔認証機能を搭載したNECのPC「LaVie L」。液晶画面の上部にWebカメラを搭載

 NECの「Neo Face」は2007年7月、乗車したまま顔認証を行う世界初の出入国ゲート管理システムとして香港で稼動を開始した。またNeo Faceは2007年9月、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのゲートシステムにも採用され、この11月から稼動を開始している。さらに2007年9月発売の個人向けノートPC「LaVie L」にも顔認証機能を搭載した。液晶画面の上部に内蔵している有効画素数198万画素のWebカメラ(図8)を使って本人認証を行うシステムで国内では初めて。NECは顔照合・検出エンジンをソフトウェア開発キット(SDK)として提供してもいる。

 携帯電話やデジタルカメラには数年前から搭載が始まっている。例えば携帯電話ではNTTドコモが2005年6月発売のP901iSで初めて顔認証機能を搭載した。狙いは、おサイフケータイ付きの携帯電話を売り出したところ、パスワードだけでは不安とするユーザーの声が多かったためだとしている。デジタルカメラでも2005年2月、ニコンが「生体認証技術を用いた世界初の『顔認識AF』機能搭載」としてCOOLPIX 7900/7600/5900を発売。これは撮影画像内の人物の顔を検知してピントを合わせるもの。ニコンは「この機能によって、撮影画像のどの位置に顔があっても、顔にピントを合わせることが可能」としている。

 デジタルカメラの顔認証機能搭載については、最近ではソニーの「スマイルシャッター」が話題を呼んでいる。2007年9月発売のサイバーショット「DSC-T200」「同DSC-T70」に搭載しているもので、顔検出機能「顔キメ」を進化させ、カメラが笑顔に反応して自動的にシャッターを切る仕組み。具体的には、シーンセレクションでスマイルシャッターモードを選択し、シャッターボタンを深押しすると笑顔を感知する画面になり、記録メディアや内蔵メモリーがいっぱいになるか、6枚まで撮影すると自動的に撮影を終了する。

 2007年11月には“世界初の顔認証機能付たばこ自販機”も登場した(図9)。自動販売機大手のフジタカ(京都府長岡京市、高井保治社長)が開発したたばこ自動販売機「FUT40」で、内蔵されたカメラに顔を見せるだけで成年か未成年かを判別する。具体的には、自販機に搭載している「年代層判定システム」で目や口の周りの皺・たるみの情報、骨格の情報などから年代層を判断し、成人と判断した場合のみ購入を受け付ける。3タイプを品揃えしており、価格は80万~110万円。初年後合計1万台の販売を目指す。

図9:顔認証機能付たばこ自販機も登場(フジタカ) 図9:顔認証機能付たばこ自販機も登場(フジタカ)

 未成年者への販売防止機能を高めるため、二十歳前後の年代層の判別は当システムでは行わず、運転免許証識別装置に誘導する。同装置では免許証の生年月日を読み取り、年齢の確認と同時に「顔照合システム」で差し込まれた免許証の写真と利用者が同一人物であるかを照合する。免許証で成人確認ができた利用者の顔情報は、自動的に暗号化されたデータで保存され、2回目以降は保存されたデータとの比較を行う「顔認証システム」の本人認証で購入が可能になる。

 たばこの販売に関しては、未成年者喫煙防止の取り組みの一環として社団法人日本たばこ協会、全国たばこ販売協同組合連合会、日本自動販売機工業会が中心となり、2008年3月から順次、全国のたばこ自動販売機を「成人識別たばこ自動販売機」に変更する。この自販機には「taspo(タスポ)」というICカードを採用することになっているが、フジタカはこれを一歩進めた格好。「従来のカード方式や免許証方式では利用者に支持されず、年齢識別の稼動が普及しない状況にあった。そこで今回の自販機を開発した」(同社営業企画部岡田邦生氏)としている。従来型に比べて価格は約3割増になるが市場の反応はよく「現在、引き合いが多く、生産が追いつかない状態」(同・羽尻陽介氏)という。

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