進化するバイオメトリクス――(3)静脈認証

世界初のマウス型手のひら静脈認証装置の登場

 富士通は2007年9月、手のひら静脈認証装置「PalmSecure(パームセキュア)」のPCログインキットを開発し、マウスタイプとスタンダードタイプの2種類を法人向けに販売を開始した。マウスタイプは手のひら静脈認証装置としては世界初の製品だ(図5)。「ベンダーとしては高いものを売りたいのは山々だが、そうなると期間もかかる、人もかかる、ユーザーも限られる。普及の鍵はいかに安く、早く、簡単に生体認証が導入できるかにあるので、“高度な本人認証をより身近に、より簡単に”というキャッチフレーズの下に今回の製品を開発した」(代居氏)

図5:世界初のマウス型手のひら静脈認証装置(PCログインキット) 図5:世界初のマウス型手のひら静脈認証装置(PCログインキット)

 この装置のポイントは、手の位置を確定させるためのガイドがないこと。富士通は2007年春まで、手のひら静脈認証装置にはガイドを付けてきた。だが、PCログインシステムでガイドがパソコンの横にあるのは不恰好だし、大きくて邪魔である。そこで「ガイドなしにどんな形でも読めるようにしよう」との戦略の下に開発に取り組んだ。

 だが、ガイドがないと利用者はどう手をかざしていいのか分からない。それにガイドがないと認証する位置がかなり限られてくる。そこで富士通は「ガイドレス」と「認証機能強化」の2点に取り組んだ。その結果、ガイドレスはマウスを握った状態で、そのままふっと手を上げ宙に浮かしたままで高速検出ができるようになった(図6)。認証機能の強化は照合処理そのものの高速化で「今回のマウスによる認証の体感スピードは1.5~2秒に向上した。目標値は1秒以内」という。

図6:ガイドレスによる高速認証の実現 図6:ガイドレスによる高速認証の実現

 使い方は簡単で、マウスにバンドルされているソフトをパソコンにインストールし、ユーザー自身の手のひら静脈のデータをパソコンに登録すれば準備完了。あとはインストーラーの案内に従って操作するだけだ。

 普及の鍵は、指紋センサーのような5000円から1万円程度という手頃な価格が打ち出せるかどうか。「そこが指紋と静脈の違い。センサーだけの価格比だと1万円対2万円といった感じになる。ただ、指紋センサーは安い代わりに読み取り率が低かったり、操作にコツが必要だったりする。それに対して静脈センサーは高い分だけ確実に登録できるし、確実に認証できる。それだけの価値があることをユーザーには認めていただきたい」(同)。

 今回のマウス型手のひら静脈認証装置はオープン価格だが、2万円台後半で提供する。ただし法人向けであり、パソコンショップなどで個人向けに販売する計画は今のところない。富士通は今回のセンサーを、日本を含めた全世界で今後3年間に20万台販売したい意向である。

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