製品ウオッチャー 進化するバイオメトリクス――(3)静脈認証

静脈認証が一般に知られるようになったのは2004年10月、東京三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)が非接触型手のひら静脈認証システムをATM(現金自動預け払い機)に採用して以降であろう。それから3年が過ぎた現在、静脈認証はPCログインシステム、入退室管理システム、勤怠管理システムをはじめ、多方面で利用されるようになった。最近ではマウスや自動車のハンドルにまで搭載され、より身近な生体認証システムへと進化しつつある。ただし、世界的にみると生体認証全体に占める静脈認証の割合はまだ少ない。それは伝統的に指紋認証が採用されてきたからだが、このところ海外でも静脈認証を採用するケースが増えつつある。静脈認証の有効性を世界が認め始めたのだ。

文/日高 俊明
2007年12月05日

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世界が認め始めた静脈認証の有効性

 国内では静脈戦争などと言われるが、重要なのはいかにユーザーが実際に利用しているか。三菱東京UFJ銀行で使われている手のひら静脈認証用のICカードは、日本で一番多く出ている生体認証用のカードだ――こう語るのは富士通 ビジネスインキュベーション本部プロジェクト統括部長の代居(よずえ)智彦氏。言うまでもなく、三菱東京UFJ銀行が採用している「手のひら静脈認証」は富士通が開発した技術である。

 金融庁が2007年3月末にアンケート集計したデータによると、生体認証対応ATM台数は1万8499台で、生体認証対応カード発行枚数は205万枚。約4ヵ月のタイムラグがあるが2007年8月現在、三菱東京UFJ銀行の生体認証機能付き「スーパーICカード」の累計発行枚数は160万枚である。生体認証対応カード全体に占める比率は極めて高い。そしてスーパーICカード160万枚のうち、手のひら静脈データ登録済みは70万枚に達する。

 生体認証用ICカードは、むろん発行段階では生体情報は入っていない。従って、いくら生体認証機能付きと謳っていても、利用者が生体情報を登録しない限り生体認証はできない。そして、一般的に生体認証対応カードはそのままICカードとして使えるので、生体情報の登録をしない利用者が相当数に達するのが実情だ。先の金融庁のデータにある生体認証対応カードの発行枚数205万枚という数字は、キャッシュカードの発行枚数3億4,079万枚のたった0.6%にすぎない。

 「新聞報道では、静脈登録が発行カード枚数の1割に達していない金融機関もある。その点、三菱東京UFJ銀行の静脈登録率は当初6割、UFJ銀行との合併後でも4割近い70万人が登録している。だから我々は自信を持って、世界で最も多く使用されている生体認証ICキャッシュカードであると言えるし、金融機関における世界最大規模の生体認証事例と言えると思っている」と、代居氏は胸を張る。

 三菱東京UFJ銀行の静脈データ登録率が高い理由は、カードの特典として、静脈データを登録した利用者がなりすまし等の不正取引の被害に遭った場合、無条件に最大1億円まで補償すると謳っていることが大きい。裏を返せば、それだけカードの個人認証システムに絶対的な自信を持っていることになる。

 こうした実績をベースに、富士通は2006年から海外展開を始めている。そして同社は海外市場における静脈認証の手ごたえについて、生体認証専門のアメリカの調査会社であるIBG社のレポートに変化が出たと、次のように指摘する。「2006年のレポートでは出てこなかった『静脈』という項目が、2007年のレポートで初めて出た。それだけ静脈認証が認知された証だと思う」

 IBG社によると2007年の生体認証市場全体に占める静脈認証の割合は3%で、今後漸増していくと予測している。一方、富士通では「指紋や顔、虹彩の領域も狙える」と市場拡大に向けて強気の構えだ。

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