指紋認証は「バイオメトリクス」(生体認証)の中で最も普及しており、日本でも世界でも全体の6割前後を占める。それだけに技術革新も盛んで、最新のものでは誤認率が1000万回に1回以下という極めて高精度の照合技術を実現している。こうした技術進化を背景に利用分野も拡大しており、警察や司法関連での捜査、ハイセキュリティを要求されるエリアでの入退室管理、電子決済承認、管理端末の利用制限などから、サービス業などでの本人確認システムや勤怠管理システムなどまで多種多様だ。従来、指紋認証は水に弱い、あるいは、偽造指への対応が不十分といった指摘もなされてきたが、それらへの防御を実現したとする技術も登場するなど、進化を続けている。
文/日高 俊明
2007年11月28日
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指紋は「万人不同」で「終生不変」
なぜ、指紋認証なのか。それは指紋が「万人不同」であり「終生不変」という、生体認証に不可欠の条件を最もよく満たしているからである。万人不同とは「二人と同じ人が存在しない」ということ。同一人物の他の指や、双子の兄弟でも同じ指紋は存在しない。終生不変とは「身体の成長や歳月の経過の影響を受けず一生変化しない」ことで、顔などが歳月とともに変化していくのに対して、指紋は不変である。このように指紋の識別性は非常に高い。もちろん、身体の一部なので、カードなどのように「盗難」に遭ったり、「置き忘れ」をすることもない。
指紋認証の歴史は古い。日本には昔から拇印の習慣がある。中国やインドでも、古くから指紋を使って個人認証が行われていたとされる。ただし、指先の腹にある渦状の紋様が「万人不同」で「終生不変」であると知られるようになったのは1880年のヘンリー・フォールズの学会発表からと言われているが、それでも指紋認証は130年近い歴史を持つことになる。
それだけの歴史と実績を持つ指紋だが、ときとして静脈や虹彩などに比べると照合の精度は劣るといった捉えられ方をすることがある。これに対して指紋認証のトップベンダーである日本電気(NEC)の第二官公ソリューション事業部バイオメトリクス事業推進部長・小林正幸氏は次のように解説する。
「静脈は高精度で指紋はそうではないような捉え方があるとすれば、それは誤解。指紋認証は安価なタイプから超高級タイプまで幅が広い。その中で安価なタイプは精度が低いということであって、例えば我々の指紋認証の他人許容率は0.00001%(1,000万回に1回)以下であり、静脈よりも高精度だ。また、静脈は終生不変かどうかの結果は出ていない。その点、指紋は歴史も長く、終生不変であることが実証されている。そういう意味でも指紋の信頼性は高い」
NECが指紋認証(AFIS=Automated Fingerprint Identification System)の研究開発に着手したのは1971年。約10年後の1982年には日本の警察庁に最初の実用システムを納入、1984年には米カリフォルニア司法省・サンフランシスコ市警にも納入した。現在、同社の指紋認証システムは米国約40州の警察や連邦政府機関をはじめ海外でも利用され、捜査などに大きな効果を上げている。
この連載のバックナンバー
- ドライブレコーダー、本格普及の予兆 (2008/04/18)
- 進化するバイオメトリクス――(5)顔認証 (2007/12/19)
- 子供を犯罪から守るITシステム (2007/12/12)
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