製品ウオッチャー 進化するバイオメトリクス――(1)総論

身体的特徴などを用いて本人認証を行う「バイオメトリクス」(生体認証)を採用する企業が増えている。生体認証はこれまで、官公庁や自治体、大手企業の工場や研究所など、ハイセキュリティを要求される限られた組織や部署で採用されてきた。だが最近は中堅中小企業、カラオケチェーンや居酒屋チェーン、エステサロンなどでも採用されるようになった。適用分野も入退室管理システムに代表される物理セキュリティ(アクセスコントロール)のみならず、PCログインシステムを初めとする情報セキュリティから、勤怠管理システム、電子決済システムなどへと拡がっている。生体認証は新たな進化の時を迎えつつある。そこで今回から5回連載で生体認証の技術や市場の動向を探る。第1回目の今回は、生体認証の技術と市場を概観する。

文/日高 俊明
2007年11月21日

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1980年代から実用化した生体認証システム

 わが国の警察庁が初めて指紋によるバイオメトリクス(Biometrics)を採用したのは1982年である。日本における生体認証の実用システムはこの頃から始まったといえる。その後、原子力施設、病院や工場、研究所といったハイセキュリティを要求されるエリアへのアクセスコントロール(フィジカルセキュリティ)として採用され、一般オフィスの入退室管理システムへと拡大していった。

 フィジカルセキュリティを後追いする形で、生体認証はロジカルセキュリティ(情報セキュリティ)分野でも採用が始まった。顕著になったのはインターネットの普及が始まり、個人でのPC利用が本格化した1990年代半ば以降である。

 「インターネットの時代になって、例えばどこかの国でカードの偽造が発生すると、そのデータは世界中を巡ることになる。従ってデータを保護するためには世界のどこの国であろうと、同じ程度のセキュリティレベルが必要になってきた。環境汚染と同じで、どこかの国だけがきちんとしていれば事足れりというわけにはいかないのがグローバル時代だ」(ビデオテクニカ社長の住谷健氏)

 こうした事情を背景にPCログインシステムに生体認証が採用され、市場は拡大していった。PCログインシステムは、本人でなければパソコンを立ち上げることが出来ない。従来はIDとパスワードを入力することによってパソコンを立ち上げていたが、生体認証によるPCログインシステムはIDとパスワードを無効に設定する機能を搭載している。従ってそれを設定しておくと生体認証でしかログインできないという、極めてセキュリティの高いものになる。

 「生体認証市場はPCログインシステムが最大。生体認証は、要はIDとパスワードの代行入力」と語るのは富士通 ビジネスインキュベーション本部プロジェクト統括部長の代居(よずえ)智彦氏。富士通は2007年9月、世界初のマウス型手のひら静脈認証装置の販売を開始しているが、これもPCログインシステムを狙ったもの。PCログイン認証ソフトウェアを標準添付している。アドオンする方式のシステムなので既存のID、パスワードによるアクセスシステムを作りかえる必要がない。既存システムに何ら影響を与えることなく、今までのID、パスワードのシステムを生体認証に変えることができる。富士通は「一般に生体認証というとガチガチのセキュリティシステムを構築しなければいけないというイメージがあるかと思うが、一方で、こうした既存のセキュリティをそのまま使える簡易な生体認証もあるということをアピールしたい」とする。

 富士通に限らず、最近は多くのPCメーカーが自社のPCに生体認証を搭載するようになった。そしてその流れは携帯電話などへと波及している。

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