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“魔女の一撃”にご用心!
腰が悲鳴をあげていませんか?
日常生活の何気ない動作が腰に大きな負担を強いているのです。
文/中野優、イラスト/松本孝志
2005年11月4日
人類の最大の特徴の一つは、二足(直立)歩行と言われます。今からおよそ600万年ないし700万年前、恐らくはアフリカ北東部の紅海沿岸で、類人猿の一グループが二本足で立ち上がり、直立歩行を始めたとされています。しかし、その代償はたいへん高くつく結果となりました。
哺乳類の脊柱(背骨)は1億年以上も掛けて進化してきたものであり、四つ足を地につけ、背骨を地面と平行にして歩くのに極めて都合良く出来ています。背骨は足という二対の動く柱によって支えられた一本の緩やかなアーチ。内臓の重みはこのアーチによって垂直に支えられ、アーチ全体に均等にその重みが掛かるようになっています。ところが、私達の遠い祖先はこの完璧な設計を無視して、二本足で歩くことを選択してしまったのです。
中高年男性に多い椎間板ヘル二アとぎっくり腰
人が立ったり歩いたり走ったりすると、背骨を構成する一つひとつの椎骨は、それより上にある椎骨や身体(頭や内臓、筋肉)の重さをすべて支えなければいけません。このため、椎骨と椎骨の間にあり、クッションの役割を果たす椎間板が上から押し潰される格好となります。背骨全体の長さで見ると、2・5㎝程も短くなると言われており、人は昼間起きていれば、時間の経過と共に身長が縮んでいくというわけです。
しかし、夜に就寝後は、椎間板はまた正常な形になり、身長も元に戻る仕組みになっています。ただし、この椎間板の復元力は年を取るに従い、小さくなっていくため、身長も縮みっぱなしになります。誰でも年を取ると、少し背が低くなりますが、そのからくりは椎間板にあったのです。
身体の重さで押し潰される椎間板は、軟骨で出来ていて、中心部分の「髄核(お饅頭で言えばアンコの部分)」と周辺部分の「線維輪(皮の部分)」から成り立っています。椎間板がクッション足り得るのは髄核があるからで、髄核は水分を吸収、放出して、椎間板の厚みを調整しています。
みなさんもよくご存じの「椎間板ヘルニア」は、椎間板の線維輪に亀裂が入り、そこから髄核が飛び出した状態を言います。その結果、周りの神経(あるいは神経根)が圧迫され、痛みやしびれが生じるのです。
では、線維輪の亀裂はどのようにして生じるのでしょうか。最も卑近な例は、中腰の前かがみ姿勢によるものです。例えば、椅子に座ったままで前かがみの姿勢をとると、ただ立っている時と比べ、約1・5倍の力が腰部にかかると言われます。ましてや、その姿勢で重い物を持ち上げようものなら、繊維輪に亀裂が生じる危険性は極めて高くなります。
働き盛りの男性に多いのは、前述の腰椎椎間板ヘルニア、そして「ぎっくり腰」です。ぎっくり腰は別名「急性腰痛症」と言い、中世ヨーロッパでは、大男も泣き出すほどの痛さということで、「魔女の一撃」と恐れられていたようです。
ぎっくり腰は、いわば急激に起きる腰痛の総称と言ってよく、現在ではその大半が「腰椎捻挫」によるものであることが分かっています。
捻挫とは、関節が運動可能域を超えて無理に動かされた時に、その構成要素である関節包や靭帯、滑膜がねじれ、部分的に切れてしまった状態を言います。実は脊椎(腰椎)も椎骨と椎骨の間は関節構造(=椎間関節)なので、腰部の椎間関節を構成する関節包、靭帯、滑膜が無理な力によって損傷を受けた場合を腰椎捻挫と呼ぶわけです。
デスクワーカーに意外に多い腰痛持ち
腰椎捻挫を引き起こす要因も腰椎椎間板ヘルニアとほぼ同じです。すなわち、中腰のまま重い物を持ち上げた時、急に腰をひねったり曲げたり伸ばした時、長時間の座位から急に立ち上がった時、あるいは突然激しい咳やくしゃみをした時などに、腰部に過度の力が加わり、腰椎の椎間関節に捻挫が起こり、ぎっくり腰として発症することになるわけです。
腰痛を予防し、再発を防止するためには、日頃、日常生活において、腰への負担が少ない姿勢や動作を心掛けることが大切です。
椎間板ヘルニアやぎっくり腰を患う人には、重労働の人は意外と少なく、一日中デスクワークをする人や長時間車の運転をする人に多いというデータがありますが、同じ姿勢を続けることは、腰に負担をかける原因の一つです。
ですから、こうした仕事環境にある人は、できれば1時間置きに休憩して、軽く身体を動かしましょう。また、長い時間立ち続ける仕事の人なら、正しい姿勢を保つように心掛け、時々壁にもたれるなどして、背中をリラックスさせてあげるといいでしょう。
腰痛予防のための体操
●腰痛を防ぐためには腹筋と背筋、および下半身を鍛えることが大切
- 腹筋と背筋を鍛える
⇒体操腕立て伏せ体操(一日30回) - 下半身(大腿四頭筋)を鍛える体操
⇒もも上げ体操(左右それぞれ一日30回)
その他、ラジオ体操、階段上り下り、縄跳び、水中歩行などもオススメ
この連載のバックナンバー
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