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朝日を浴びるとよく眠れる?
今日からできる簡単快眠術
もしかしたらその原因は、生物時計の遅れにあるのかもしれません。
文/中野優、イラスト/松本孝志
2005年11月2日
人間は生まれながらにして、脳の中に「生物時計」を持っています。例えば、夜になると眠くなるのも、朝に目覚めるのも、これが機能しているためです。では、こうした働きを持つ生物時計とは、一体どんなものなのでしょうか?
カラクリはこうです。人間の体は、寒さにさらされると交感神経が刺激され、動脈が収縮して血圧が上がります。中でも高血圧症の人は、動脈硬化が進み、血栓が出来ていたり、血管が破れやすくなっている可能性があるため、寒さによる急激な血圧の上昇が発作のきっかけとなる確率が高いのです。
地球は自転のために、太陽の光が当たるエリア(=昼)と当たらないエリア(=夜)に分かれます。地球は1回転するのに24時間掛かりますから、昼と夜の1サイクルも当然、24時間ということになります。地球上のほとんどの生物は、この昼夜サイクルに合わせて活動し、休息を取ります。なぜなら、そうすることが生存に有利だからです。そして、35億年という途方もない歳月を掛けて、昼夜サイクルという環境変化に適応した生命リズムを獲得したのです。
このリズムの発振体のことを生物時計と言います。生物時計は、脳の中の視交叉上核と呼ばれるところにあり、そこには約1万個の神経細胞の集団が存在します。そして、それらの細胞は概ね24時間の時間を刻んでおり、このリズムを「サーカディアン・リズム」と呼んでいます。
毛細血管の目詰まりが高血圧の原因だった!?
そもそも毛細血管は、体の隅々で網目のようなネットワークを形成し、体の細胞一つひとつに酸素や栄養素を運んでいます。と同時に、組織から吐き出された有害物や老廃物も回収する役割を担っています。
毛細血管が目詰まりを起こすと、全身の血液の流れが停滞し、役割が果たせなくなってしまいます。
そうなっては大変です。そこで、体は無理やり血液の流れを強くして対処するため、血圧を上げるという戦術に出るのです。例えて言えば、水道の蛇口に繋いだホースのようなもの。途中で強く圧迫して水圧を上げると、それまでより遠くに水を飛ばすことができます。これと似た現象が体内で起こると考えれば分かりやすいでしょう。
つまり、動脈を収縮させて血圧を上げ、強くなった血流によって毛細血管の目詰まりを蹴散らそうという作戦です。とは言え、たくさんの毛細血管が目詰まりを起こしているような場合、すべて再開通させるには、血圧の高い状態を維持しなければなりません。
冒頭でお話したように、持続的な血圧上昇は、動脈の内壁に傷を付け、結果として動脈硬化を進めます。そしてそれが原因となって、時に血管が詰まり脳梗塞や心筋梗塞が、また時に血管が破裂して脳出血などが起こるのです。
25時間サイクルの生物時計は毎日リセットすることが必要
生物時計はサーカディアンの直訳(=約1日)からも分かるように、実際には24時間ではなく、25時間の時を刻んでいます。このため、放っておくと、日常の生活時間より1時間ずつズレていく仕組みになっています。
例えば、長期休暇で、毎日夜更かしと朝寝坊を繰り返したとしましょう。すると、夜寝る時間はどんどん遅くなり、その分、朝起きるのも次第に遅くなっていきます。これは、 25時間サイクルで生活してしまうために起こる現象です。もし仮に一日1時間ずつズレ ていくと計算すれば、2週間後には昼夜が逆転した生活になることでしょう。
ただ、夜がどんなに遅くなっても、朝はいつも通りに起床し、仕事へ出掛けているのであれば、生物時計が大幅にズレることはありません。これには朝日が大きく関係しています。実は、朝起きた時や出勤途中に浴びる朝日が、ズレやすい生物時計を毎日リセットしてくれていたのです。
仮に、外界時計(機械の時計)は朝の7時なのに、生物時計は1時間遅れの午前6時だったとしましょう。その際、朝日を10分間しっかり浴びると、生物時計は1時間程進み、外界時計と同じ午前7時10分あたりを指すようになります。
一方、夕方にやはり強い光を浴びた場合は、生物時計が遅れるという逆の現象が起こります。
このように生物時計は、光を浴びることによって午前中は早く進み、夕方に遅れるという、外界の時計とは全く異なる特徴を持っているのです。
人間は誰しも、夜になると眠くなります。なぜ夜になると眠くなるのでしょうか。それは、「覚醒信号」が弱まるからなのです。脳の中には、覚醒中枢という場所があり、そこに生物時計が覚醒信号を送ると、覚醒中枢にスイッチが入って、目が覚めるのです。
覚醒信号は朝方に強まり、日中いっぱい覚醒中枢を刺激し続けます。そして、夜になると、その覚醒信号が次第に弱まり、結果として眠気が到来するというわけです。
しかし、夕方から夜にかけて強い光を浴びてしまうと、生物時計が遅れますから、その分、覚醒信号が弱まるのも遅れます。つまり、眠気がなかなか出てこないということです。
当然、寝るタイミングも遅くなり、それだけ朝方の覚醒信号の出現が後にズレ込みます。すると結局、生物時計ではなく、目覚まし用の機械の時計で叩き起こされることになり、ボーッとした何とも言えない不快な気分を味わうハメになるのです。
朝日はしっかり浴びて夜は強い光を避ける
もし朝に気分スッキリと起きたいなら、生物時計を遅らせないことです。それには、まず起床時に朝日をしっかり浴びる習慣をつけ、そして、夕方から夜にかけては明るい場所で長く過ごさないことです。そうすれば、生物時計は外界の昼夜サイクルに合わせて、夜には覚醒信号を確実に弱めて眠気を誘発し、安らかな眠りへと導いてくれるでしょう。
生物時計は、暗くなったら眠る、明るくなったら起きるという原始時代の生活に最も適した時計です。科学や文明が高度に発達したとは言え、私達の脳や身体は依然として原始人のまま。それを忘れて思い上がっていると、生物時計の思わぬしっぺ返しに遭うことになりますから、くれぐれも生物時計の機嫌を損ねないよう注意しましょう。
また、下の表に「良質な睡眠を得るためのコツ」を合わせて紹介しておきましたので、参考にしてください。
良質な睡眠を得るためのコツ
- 睡眠時間は人それぞれ。8時間にこだわる必要はない。眠気がなく、気力が充実した状態で仕事をこなせるなら、それがあなたの理想の睡眠時間
- 休日前日の夜更かし、休日の朝寝坊は生物時計を遅らせる可能性大。いわゆるブルーマンデーの原因ともなる
- 15分程度の昼寝が午後の眠気を減らし、仕事の能率を上げる
- 就寝4時間前以降のコーヒーや紅茶、緑茶などのカフェイン飲料の摂取、1時間前以降の喫煙は寝付きを悪くし、眠りの質を低下させる
- 睡眠薬代わりの寝酒は眠りの質を低下させ、飲酒量の増加につながる
- 夕方から夜にかけての適度な運動は寝付きを良くし、熟睡をもたらす
- ぬるめの湯につかる、軽い読書や音楽、落ち着いた香り、ゆったりしたストレッチなどが眠気を誘う
- 寝室は睡眠専用に使う
- 照明器具やカーテン、窓などの工夫で、静かさと暗さを演出する
- 温度と湿度の調節も大切(共に高いと、睡眠を妨げる)
- 床に入って30分くらい経っても寝付けない時は一旦床を離れ、リラックスした気分で眠気が訪れるのを待つ
- 眠りが浅い時には遅寝、早起きを試みる。それでも眠れない時は、うつ病や睡眠時無呼吸症候群などの可能性もあるので、早めに医師に相談する
- 夜勤中は職場の照明を明るめにすると眠気が減り、仕事の能率が上がる
- 夜勤明けの帰宅時は、サングラスなどで強い日光を避けると、帰宅後の入眠が容易になる
この連載のバックナンバー
- Health Navigator ― “魔女の一撃”にご用心! (2005/11/04)
- Health Navigator ― “疲れ知らず”が死を招く (2005/11/04)
- Health Navigator ― 長時間労働が過労死を招く (2005/11/02)
- Health Navigator ― 朝日を浴びるとよく眠れる? (2005/11/02)
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