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自分の「におい」は気付かない
キツい体臭は疾患のサイン
文/中野優、イラスト/松本孝志
2005年9月22日
私達の身体は、約60兆個の細胞で出来ており、その細胞の一つひとつは脂質やタンパク質で作られています。細胞を構成するこれらの物質は不変ではなく、絶えず新陳代謝によって入れ替わります。その際、脂質は脂肪酸に、タンパク質はアミノ酸やアミンという物質に分解され、それぞれがにおいの成分となります。
つまり、細胞が生きていれば、常ににおいの元は作られているわけで、その細胞の塊である私達の身体がにおうのは当然のことなのです。
ただし、身体は全身を皮膚で覆われているため、内臓のにおいがそのまま外に発せられることはあまりありません。その代わり、皮膚や体毛の密集部分(頭部、腋の下、陰部)内臓が体の表面に露出する部分(口、気道、肛門など)から、においが放たれます。
では、なぜ「におう」のでしょうか。においの放出源の一つである「皮膚」と「口」を例に、それぞれのメカニズムを説明しましょう。
体がにおう病気
主犯格は揮発性の脂肪酸
中年男性がにおうのは当然?
まずは皮膚です。皮膚が放つにおいの元となるものに、皮脂があります。皮脂とは、皮脂腺から分泌される脂のことで、皮膚を滑らかに保ち、乾燥から守る働きがあります。
しかし、これが空気に触れて酸化したり、皮膚の表面に棲んでいる細菌によって分解されると、くさい物質、この場合は揮発性の「脂肪酸」に変化し、においを発するようになります。
脂肪酸は、いわば体臭の主犯格だと言っていいでしょう。
分かりやすい例で言えば、脂っぽいものをたくさん食べると、皮脂が多くなり、同様に作られる脂肪酸の量も増えるため、体臭はきつくなります。
また、男性が「脂ぎっている」「くさい」と言われてしまうのも、実はこのせいです。男性ホルモンは皮脂腺の発達を促し、かつ皮脂の分泌を盛んにします。つまり、男性は脂ぎっているのが普通で、それだけ細菌による脂肪酸の生成も多くなるため、女性より身体がにおうのは当たり前なのです。
このほか、最近話題の中高年臭(加齢臭)も脂肪酸が原因と言われます。40歳を過ぎると、皮脂の成分の中で、パルミトオレイン酸という脂肪酸が増えてきます。このパルミトオレイン酸がノネナールというくさい物質に変化し、その結果、中高年特有の体臭が生じるのです。
加齢臭は老化現象の一つですから、少々におうからといって過剰に気にする必要はありませんが、体臭が自身でも気になるぐらい、きつくにおうようになったら注意が必要です。加齢臭は生活習慣病と密接に関係しているとも言われますし、体臭が様々な疾患のサインである場合も少なくないからです。
例えば、糖尿病や脂肪肝などの疾患は、脂肪酸が血液中で増え、皮膚表面の脂肪酸も増加するため、体臭が顕著になりますし、神経疾患のパーキンソン病は、皮脂分泌が活発化し、やはりにおいが強くなります。
オススメのにおい対策
●体臭の防ぎ方
1.清潔の維持
こまめな入浴やシャワーで皮脂や汗、垢を洗い流す
2.腋臭(ワキガ)の場合
・腋毛を剃る(腋毛は細菌繁殖の温床)
・殺菌剤入りの制汗・デオドラント剤で除菌
・毎日の入浴など、汗をこまめに拭き取る
●口臭の防ぎ方
1.クリーニング(除菌・歯垢の除去)
・毎食後、こまめに歯を磨く
・舌苔(口臭の一因となる舌に付着する物質)の除去
・殺菌剤入りの口腔洗浄剤を使う(リステリン、モンダミンなど)
・定期的に歯科を受診し、歯垢や歯石(歯垢が石灰化したもの)を取り除いてもらう
2.唾液の分泌を促進(殺菌)
・シュガーレスガムを噛む(クロロフィル入りのガムは消臭効果もあり)
・梅干しやダシ昆布を口に含む
・舌をよく動かす(舌の下にある唾液腺を刺激する)
3.においを消す
・緑茶(カテキン)でうがい
・クロロフィル・サプリメントを服用する
百年の恋も冷める口のにおい
大半は虫歯や歯周病が原因
次に、身体のにおいの中で最も敬遠される口臭のメカニズムです。
口臭は一般に、生理的なものと病的なものに分けられますが、前者の代表が寝起きの口臭です。これは睡眠中、唾液の分泌が低下することにより生じます。
唾液にはリゾチームや免疫グロブリンAといった殺菌物質が含まれており、それらは口腔内で細菌が繁殖するのを防いでいます。しかし、眠っている間は唾液の分泌量が減るため、細菌が増殖し始めます。
すると、その細菌によって、口の中に残っているタンパク質が分解され、その結果、卵やタマネギが腐ったような悪臭がする揮発性硫黄化合物(以下、VSC)が発生し、寝起きの口臭となるわけです。
一方、病的な口臭の原因は、その大半が虫歯や歯周病などの歯科的疾患です。虫歯で穴の開いた歯に食べカスなどが詰まると、腐敗菌が働いてやはりVSCを産生し、口臭が生じます。
口臭のもう一つの原因である歯周病は、以前、歯槽膿漏と呼ばれたもので、歯と歯肉の間(歯周ポケット)の炎症で始まる病気です。歯周ポケットには歯垢が溜まりやすく、その歯垢の奥深い所に腐敗菌が潜んでいて、やはりVSCを産み出すのです。
いずれにしても、口臭がひどい時には、まず歯科を受診してみることをお勧めします。
男性は中高年ともなると、とかく身だしなみに無関心になり、自分の発散するにおいにも気付きません。〝くさいおじさん〝というレッテルを周囲から張られる前に、上の「オススメのにおい対策」などを参考に、爽やかな男性へと変身しましょう。
文◎中野優Masaru NAKANO
1950年埼玉県生まれ。80年東京医科大学大学院修了。
同大助教授を経て、現在小田急電鉄健康管理センター所長
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