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すごいイビキ、かいていませんか?
“死の五重奏”への黄色信号
文/中野優、イラスト/松本孝志
2005年8月12日
「主人のいつものうるさいイビキが夜中に突然止まることがあって、とても心配です」と訴える奥さんが最近、増えています。実はイビキが止まっている時には、同時に呼吸も止まっていることが多いのです。
このような、睡眠時に10秒以上呼吸がない状態を「無呼吸」と言い、1時間に平均5回以上、あるいは一晩の睡眠(約7時間)に30回以上の無呼吸がある場合を睡眠時無呼吸症候群(以下、SAS)と呼びます。
では、イビキと睡眠時無呼吸はどのような関係にあるのでしょうか。それを理解するために、まずイビキのメカニズムについて触れましょう。
私達は、空気を呼吸して生きていますが、この空気の通り道を気道と言います。空気は鼻腔からノドの上気道、気管と気管支からなる下気道を通り、最後に酸素と二酸化炭素の交換場所である肺胞へと行き着きます。
イビキはその内の上気道が狭くなること(狭窄きょうさく)によって起こります。上気道が狭くなると、空気の出入りが窮屈になり、その影響で主に軟口蓋が振動し、イビキが起きるのです。
では、一体何が原因で上気道は狭くなるのでしょうか。すぐに思いつくのは、鼻腔からノドまでの間に何か障害物がある場合です。つまり、イビキには耳鼻科領域の病気が潜んでいる可能性があるわけです。
そして、耳鼻科的なものなどの疾患が否定された時、次に考慮すべきは肥満です。と言うよりも、イビキの原因となるのは、圧倒的に肥満であることが多いのです。肥満はいわゆる生活習慣病に直結する病態であり、その肥満の存在を訴え掛けるイビキは、いわば体への黄色信号と捉えられます。
イビキの突然の中断は睡眠時無呼吸のサイン
では、なぜ太っていると、イビキをかく=上気道が狭くなるのでしょうか。
人間はあおむけの状態で横になると、重力の影響で、舌の根っこの部分(舌根部)が沈み込み、上気道を狭くします。また、睡眠中は上気道を囲む筋肉が緩むため、ますます上気道は狭くなる傾向にあります。つまり、寝ている時は誰でもイビキをかきやすい状態にあるのです。ただし、健康な人のイビキの音は小さく、周りに迷惑を掛けることはあまりありません。
一方、太っている人は、先の条件に加え、舌根部やノドの部分にまで脂肪が付いているため、就寝中は上気道が一段と狭くなり、その結果、大きなイビキを発するようになるのです。
少々うるさくとも、イビキが一晩中鳴り響いている内はいいのですが、イビキの突然の中断が度重なるようだと、生命に危険が及ぶ場合があります。
イビキは上気道の狭窄のために発生しますが、これがひどくなると、息を吸う時に気道の壁が吸い寄せられ、一時的にせよ、完全に閉じてしまいます。すると、息も吸えなくなり、いわゆる無呼吸の状態に陥るわけです。もちろん空気が通過しなくなるのですから、イビキも止まります。つまり、大イビキの突然の中断は、睡眠時無呼吸のサインなのです。
危険なイビキの見分け方
(1)突然かくようになったイビキ
(2)速くてせわしないイビキ
(3)呼気・吸気で起こる往復イビキ(普通のイビキは吸気時のみ)
(4)突如止まって、その後爆発的な音で再開するイビキ
※(1)~(3)は何らかの疾患が潜んでいる、(4)はSASである可能性があるので要注意
睡眠時無呼吸が長く、かつ繰り返し起こると、その度に苦しくなって、目が覚めるようになります。これらの度重なる睡眠中断や酸素欠乏状態は、交感神経を過度に緊張させ、血圧を上げたり、不整脈を誘発します。また、交感神経の活動が盛んになると、血栓も出来やすくなります。
そもそも、でっぷりと太っている男性は、お腹がせり出す上半身型肥満であることが多く、いわゆる死の四重奏(内臓脂肪の蓄積、高血圧、高脂血症、糖尿病傾向)の状態に陥っているのが普通です。死の四重奏とは動脈硬化を強く加速する病態であり、最後には血栓形成を促して心筋梗塞などを引き起こし、結果として死を招きます。
交通事故や労働災害まで招くSASの怖さとは
と言うことは、死の四重奏の状態にある人がSASを合併すれば、それだけ死が近くなるわけです。このため、最近では前述の四つの病態にSASを加え、死の五重奏と呼ぶこともあります。イビキが黄色信号なら、SASはまさしく赤信号と言っていいでしょう。
また、SASは社会的にも大きな問題をはらんでいます。それは「事故」です。例えば、米国スリーマイル島での原発事故や先日の新幹線運転士の居眠り運転なども、SASに原因があると報告されています。
なぜ事故が起きるのか。それはSASでは夜間に何度も睡眠が中断するため、当然眠りも浅くなり、その影響で日中に眠気を催すからです。ある報告によれば、SAS患者の交通事故率は健常者の約4倍とも言われます。業務で車を運転する機会が多く、少しでもSASの自覚症状のある人は、一度検査を受けることをお勧めします。
イビキを防ぐ方法
●肥満している人は、まずは減量
●横向きで寝る工夫を(舌根沈下を防ぐため)
●枕は少し高めに
●鼻呼吸の習慣を(マウステープも有効)
●アルコールを摂り過ぎない
●睡眠薬は使わない
●SASが疑われる場合は専門医受診を(耳鼻科・呼吸器内科など)
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