- HOME
- >> セーフティー・ジャパン
- >> 医療・食品
Health Navigator

社員に人格障害が増える!?
会社全体で“接し方”対策を万全に
職場に少し変わった行動を取る社員はいませんか?もしかしたら、最近増えている人格障害なのかもしれません。
心のバランスを欠く人達には、どう対処すればよいのでしょうか。
文/中野優、イラスト/松本孝志
2005年7月14日
パーソナリティの語源は、ペルソナ(仮面)。
周囲の状況や役割に適応しながら変化していく
最近、精神医学において、「人格(パーソナリティ)障害」という病態が注目されています。米国で4万3000人の成人を対象に実施した調査によれば、7人に1人、全体の15%が人格障害であることが分かりました。また、これは日本でも同様の傾向にあるとされ、今後ますます増えていくとの予測もあります。
実は、頻発する常識を超えた様々な事件に、人格障害が大きく関連していると言われます。では、人格障害とはどんな状態を指すのでしょうか。
人格障害とは、病気とまでは言えないが、その人の属する社会の一般的な人と比べて“変わっている”ため、それによって本人や周囲が迷惑を受ける、人格の偏りのことを言います。
人格障害の原因は、生まれつきの気質、発育環境など、色々な要素が絡んできますが、その根底には“自我の形成不全”があると考えられています。つまり、成長の過程で“自我”がうまく育たないと、人格障害に至るということです。
本人が苦しむだけでなく、周囲も巻き込まれる人格障害
現在、人格障害は、(1)妄想性人格障害(人を心から信じられない人)、(2)統合失調質人格障害(親密な関係を求めない人)、(3)統合失調型人格障害(常に内なる世界に生きている人)、(4)境界性人格障害(愛を貪り、今その瞬間を生きる人)、(5)反社会性人格障害(悪を生き甲斐にする人)、(6)自己愛性人格障害(賞賛だけを求める人)、(7)演技性人格障害(天性の誘惑者にして嘘つきな人)、(8)回避性人格障害(失敗、傷つきを恐れる消極的な人)、(9)強迫性人格障害(責任感、義務感の強い完 璧主義の人)、(10)依存性人格障害(他人任せの優柔不断な人)――という 10のタイプに分類されています。
では、その中の一つ、強迫性人格障害を例に見ていきましょう。まずは、以下の質問に答え、幾つ自分に当てはまるか、数えてみてください。
(1)細かいところにこだわり過ぎてしまう、(2)完璧にやろうとして、よく時間が足りなくなってしまう、(3)仕事や勉強に打ち込むあまり、娯楽や人付き 合いは二の次になる、(4)不正やいい加減なことは許せない方だ、(5)役に立たないと分かっていても、捨てるのは苦手だ、(6)自分の言う通りにしない人とはうまくやっていけない、(7)お金はなるべく節約して、将来のために貯金している、(8)頑固だとよく言われる
全項目の内、4つ以上に当てはまる人は、強迫性のパーソナリティが強いと言えます。こうした人達は責任と義務を重んじる、信頼できる人である半面、ミスを許せない完璧主義者のため、 各パーソナリティの中で、最もうつ病や心身症にかかりやすいと言われます。
対策としては、休養も仕事の内と思い、100%頑張らない、責任を一人で背負わない、他人に同じことを求めない、といったことが大切です。
次に、自己愛性パーソナリティです。
①自分には世間の人が気付いていない才能や優れた点がある、②大成功して有名になることを夢見ている、③自分には人とは違ったところがあり、特 別な人間だと思う、④周囲からの賞賛が何よりも励みになる、⑤多少の無理でも、自分の望むことはたいてい聞いてもらってきた、⑥欲しいものを手に 入れるためなら、他人を利用したり、言いくるめる自信はある、⑦自分勝手で思いやりのないところがある、⑧友人や知人の幸せは、内心、妬ましい、 ⑨態度が大きい、プライドが高いと思われている
この内、5項目以上に当てはまれば、自己愛性パーソナリティと判断してよいでしょう。このタイプの人は、自分は特別な存在と思い込んでおり、周り が便宜を図ったり、賞賛し、自分を特別扱いするのは、当たり前だと考えています。そして、その特権意識がしば しばトラブルの元になるのです。
対策としては、マネジャー的パートナーを得る、あるいは耳の痛いことを言ってくれる人を大切にすることです。
自分のパーソナリティの傾向を認識しておくことが重要
強迫性及び自己愛性パーソナリティという二つのタイプを例に挙げましたが、これらのタイプに当てはまる、もしくは当てはまるような気がするという人もいるかもしれません。
しかし、それが即ち、人格障害とはなりません。自分や周囲が困り果てているわけでなければ、人格障害ではありませんから、安心してください。とは言え、「自分はこの傾向が強い」ということを認識しておくのは、社会生活を送る上でも非常に重要でしょう。
また、もし周囲にそうした人格に偏りのある人がいた場合、どう対処するかということも大切です。パーソナリティ・タイプ別の接し方のコツを左のページにまとめましたので、ぜひ参考にして下さい。
タイプ別接し方のコツ
●妄想性人格障害
親身になり過ぎない。のらりくらりと中立的な立場を維持し、彼にとって目立たない存在であり続ける。正面衝突は避ける
●統合失調質人格障害
彼の孤独な聖域を侵さないよう、慎重に時間をかけて関係を築く
●統合失調型人格障害
変人扱いをせず、彼のペースに合わせ、しっかりと意見を聞き、評価してあげる
●境界性人格障害
いい時も悪い時も一貫した態度であっさり接する。安易な親切や同情はしない。彼のペースに乗らない
●反社会性人格障害
あらゆる先入観をできるだけ捨てて、ニュートラルに接する。否定的な対応(に敏感なため)は避ける
●自己愛性人格障害
現実的な問題処理を行うマネジャー的なパートナーになる。批判したり、欠点を指摘する時には絶交を覚悟する
●演技性人格障害
演技や嘘に気付いても、面と向かってそれを指摘しない。背後にある寂しさに目を注ぐ
●回避性人格障害
彼の主体性や気持ちを尊重する。否定的な言い方をしない
●強迫性人格障害
責任の範囲や役割分担を明確に決めておく。物事の見方が一方向に凝り固まらないように、別の視点を提供してあげる
●依存性人格障害
代わりにやってあげない。親切や助けは親切にも助けにもならないことを知る
参考文献:岡田尊司著「パーソナリティ障害」(PHP新書)
この連載のバックナンバー
- Health Navigator ― “魔女の一撃”にご用心! (2005/11/04)
- Health Navigator ― “疲れ知らず”が死を招く (2005/11/04)
- Health Navigator ― 長時間労働が過労死を招く (2005/11/02)
- Health Navigator ― 朝日を浴びるとよく眠れる? (2005/11/02)
- Health Navigator ― 自分の「におい」は気付かない (2005/09/22)

