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これまですべての診断に同行していただいた専門家、セコムIS研究所の甘利康文氏に、読者の関心と、そこからうかがえる意外な防犯上の盲点などについて語っていただいた。
聞き手/橋本敏彦 文/茂木俊輔 写真/中野和志
2009年1月13日
――シリーズ企画『読者のお宅の「防犯チェック」』は、2006年11月の連載開始から2年以上になりました。そこで、昨年の第25回(2008年11月掲載)までを対象に、読者がどのような診断に興味を持ったのか、アクセス数ランキング(表1)を作ってみたのですが、このトップ10のデータをどのように見ますか?
甘利: 1位の「泥棒にマーキングされた家」というのは、確かにショッキングなタイトルですね。マーキングが、なにか特別なこと、世間ではめったにないことだからその実態を知っておきたいと思ったのではないでしょうか。
ですが、泥棒の習性や行動パターンを知っている人にとっては、実は意外でもなんでもないことです。その意味で、このランキングの上位3位(あるいは4位)までの事例には、同じことが言えるのではないでしょうか。
| 順位 | タイトル | |
| 1位 | 第10回 | 泥棒にマーキングされた家 |
| 2位 | 第14回 | はし1本で泥棒に挑んだ男 |
| 3位 | 第22回 | 前科20犯の空き巣が2度入った家 |
| 4位 | 第21回 | 泥棒にマークされてしまった!? |
| 5位 | 第7回 | 合わせガラスが破られた! |
| 6位 | 第12回 | 人目のないところ、泥棒に「不可能」なし |
| 7位 | 第16回 | 中古豪邸はスキだらけ ~ 防犯リフォーム Before編 ~ |
| 8位 | 第24回 | 根こそぎ盗られた! |
| 9位 | 第13回 | 2階リビングの防犯対策、その意外な盲点 |
| 10位 | 第8回 | 泥棒が見つけた表通りの家の死角 |
―― つまり、一般読者は泥棒のことを知らなさすぎると?
甘利: そういう一面があるのだろうということです。もちろん一般読者が泥棒のことをあまりご存じないのは当然のことでしょう。ですが、家の防犯を考える上で敵となるのは泥棒です。あまりにも知らないのでは対策が立てられない。その点はちょっと心配です。
例えばランキング3位の「前科20犯の空き巣が2度入った家」(2008年8月20日)。ここで診断した家は集合住宅の1階住戸で、同じ空き巣のプロに3年半を置いて2度入られた。
―― この家では最初に入られた時、「不運が続くことはないだろう」と、取り立てて対策を施しませんでした。
甘利: 被害に遭ったら次もある、と考えたほうがいいですね。1回入られて何も対策を講じないと、泥棒はまた狙ってくるものです。家の中の様子がよく分かっているので、仕事はとてもやりやすい。だから、被害に遭ったらこれ見よがしに対策を施して、次の侵入を防ぐ。それが鉄則です。
これまで伺ったお宅を改めて思い起こすと、防犯対策が「二極化」しているなとつくづく感じます。対策を講じている家と講じていない家とに、はっきり分かれていたように思うのです。対策を講じていない家の人は、「自分の家は狙われない」と楽観主義に傾いています。これは被害に遭った経験があるかないかとはあまり関係ありませんでした。
―― 確かに「金目のものは置いていないから、泥棒が我が家に入ることはない」と、つい高をくくってしまいがちですね。
甘利: 楽観主義に傾く理由の一つは、「我が家には取られるものがない」と思っているからです。しかし、そこには誤りがあります。
セコム IS研究所 甘利康文氏
例えば、法で定められている「最低賃金」というものを考えてみましょう。最低賃金の全国加重平均額は時給703円です(平成20年度)。1日の金額に換算すると、5600円ほど。その程度の収穫を上げられるなら、労働に値する、つまり、泥棒にとっては侵入する価値がある、ということです。
これに対して、家の中に置いてあるお金をかき集めれば、少なくとも1万円くらいにはなると一般にいわれています。泥棒にとっては、多くの家は侵入する価値のある「仕事の場」なのです。
「不運が続くことはないだろう」という感覚が、こと泥棒に対しては正しくないのと同じように、「我が家には取られるものがない」というのは、経済的な側面から見て誤った感覚だといえるでしょう。
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