新型インフルエンザの“リアル”を語ろう

パンデミック対策は防疫というよりも“戦争”

田代:日本人はリスクコミュニケーションが下手です。新型インフルエンザにはどのようなリスクがあり、どのような社会的な影響が出るのか、被害を最小限にとどめるには我々一人一人がどのように振る舞うべきなのか、といったことが国民に対して説明ができていません。

 パンデミックは生命の危機ですから、パニックになった人々が勝手に振る舞うと悲惨なことになります。パニックを防ぐには事前の説明と議論を徹底するしかありません。説明が不十分だと根拠のない風評が広がり、被害を一層拡大することになるでしょう。

 現状では、ワクチンもタミフルも万能ではありません。もちろん備蓄量も不十分です。パンデミックが起きれば必ず「国はなにをしているんだ」という声が上がるでしょうが、国が何でもできるわけではないのです。

 リスクのある現状で、被害を最小限にとどめるには一人一人がリスクを理解し、理性的に行動しなくてはなりません。理性的な行動のためには、なによりも正しい知識の徹底と、開かれた場での議論が必要です。

 パンデミック対策は防疫というよりも、戦争と考えるべきものです。トップダウンによる素早い意志決定と思い切った行動が、被害拡大をくい止めます。緊急時の素早い意志決定と行動は、平時に十分な準備と訓練を行っておかなければできません。

 その意味では、第二次世界大戦に負けてトップダウン的な社会組織が解体された日本とドイツは、不利な状況にあります。また、日本は2002年のSARS(新型肺炎)の被害を受けなかったので、パンデミックの恐怖を実感できていないことも問題です。SARSの時、世界の医療関係者は、病院での院内感染を防げなかったことに大きな衝撃を受けました。SARSの被害を受けたカナダなどの国は、いち早く新型インフルエンザに対する対策へと動き出すことができました。

 だからといって、日本が手をこまねいているわけにはいきません。これだけ全世界がパンデミック対策を実行している時に不作為というのは犯罪ですらあります。

 日本も首都直下型地震については、かなりの準備を行っています。首都直下型地震は、今後30年間に60%の確率で起きるとされています。一方、新型インフルエンザによるパンデミックは、平均して27年の間隔で1回、確実に起きています。発生確率は、首都直下型地震よりも、新型インフルエンザのほうが高いのです。

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