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日本の情報収集活動はどこが抜けているのか(第1回)
~諜報機関のない日本はひたすら富を奪われていく~
軍事ジャーナリスト 鍛冶 俊樹 氏
はたして、日本の情報・諜報活動はどうあるべきなのか。軍事ジャーナリストの鍛冶俊樹氏のインタビューを3回に分けて紹介しよう。
今回は、日本の情報活動の現状と問題点を指摘する。
聞き手・文/二村 高史
2006年4月24日
日本に欠けているのは「攻めの情報活動」
――そもそも、日本の情報活動は、どういう部署が担当しているのでしょうか。

軍事ジャーナリスト
鍛冶俊樹氏
鍛冶:
情報活動といっても、日本の場合、諸外国とくらべて非常に遅れているのが現状です。
そのなかで、あえて情報機関らしいところといえば、公安調査庁が挙げられます。ただし、調査の対象は国内に限られています。
それ以外に、多少なりとも情報機関らしき活動をしているのは、警察庁警備局や各警察署の外事課でしょう。外事課は、密入国や麻薬などの捜査を担当する部署で、その過程でさまざまな情報活動をしているわけです。
また、防衛庁には情報本部というのがあり、電波傍受をしたり、情報収集衛星や航空自衛隊の偵察機から送られてきた画像の分析をしています。
さらに、内閣情報調査室では、さまざまな省庁、部署から寄せられた情報を統括して、首相に報告するといった役割を果たしています。
以上の部署が、日本における主な情報機関といっていいでしょう。
その規模は、日本の情報活動の遅れを象徴するように、どこもこぢんまりとしています。公安調査庁にしても、正確な人数は当然秘密ですが、せいぜい100人単位といったところ。この程度の人数では、必然的にできることは限られてしまいます。
――情報活動に携わる人たちは、具体的に、どのような日常活動をしているのでしょうか。
鍛冶:
情報活動というと、毎日が命がけの連続のように想像している方も多いかもしれませんが、めったにそんなことはありません。
情報活動の基本は、まず一般に知られている情報を知ることです。アメリカの情報機関のテキストに「情報の8割は公開情報である」と書かれている通り、公開されている情報を知らなければ話になりません。
そのために、新聞を読むことから始まるわけですが、100人単位の組織だと、新聞を読むだけで終わってしまうことも多いのです。
ところで、この「情報の8割は公開情報である」という言葉は、誤解されがちなので、ちょっと説明を加えておきたいと思います。
日本の一部の人が、よくこの言葉を引用して、「そら見たことか。8割は公開情報で済むのだから、秘密情報機関なんかいらないではないか」というのですが、そうではありません。
むしろ、非公開の情報が2割残っていて、そこが非常に大事なのです。
ですから、実際の手順としては、8割の公開情報をきちんと把握した上で、さらに突っ込んで残りの2割の情報を入手しなければなりません。
その2割は、新聞社で言えば「スクープ」に当たる情報であって、そこを知るため活動がカギになってくるのです。
ところが、そこの活動が、今の日本では脆弱になっていると言わざるをえません。
――活動が脆弱になっている理由は、どこにあるのでしょうか。
鍛冶:
敗戦後、情報活動というものは、いったんゼロになってしまいました。そこから再出発しているのですから、スタート時点から遅れているのは間違いありません。
ようやく、まとも情報機関をつくろうという議論が出てきましたが、遅れを取り返すのは容易ではありません。
具体的な問題点といえば、どうしても活動が受け身になってしまうということです。
日本の情報活動は、公安調査庁にしても警察にしても、国内情報を集めることしかできません。警察は外事課という部署が担当していますが、実際に外に出て情報を取ってくるのではなくて、外から来るのを見張っているにすぎません。ですから、絶えず受け身の姿勢になってしまうのです。
ところが、敵は秘密活動をしているわけですから、どこから来るのか、どうやって来るのかもわかりません。それならそうで、守りを厳重にしなければならないのですが、実際にはそれもしていません。
結局のところ、フリーパスに近い状態になってしまっているのです。
――何かいい対策はないものでしょうか。
鍛冶:
いい例は、昨年に起きた北朝鮮の不審船事件でしょう。あの船がやってくることがわかったのは、よく知られているように、アメリカが人工衛星で監視していたからです。そして、その情報を日本に知らせてくれたからこそ、待ち受けることができたのです。
このように、前もって情報が入っていれば、待ち構えて御用にすることが可能になります。たとえば、海外にも情報のネットワークを張りめぐらして、「北朝鮮の情報機関の動きがおかしい」「日本をターゲットにしているらしい」といった情報を総合し、「どうやら金正日の息子が遊びに来るぞ」ということがわかれば、それを待ち構えて捕まえることが可能になるわけです。
いってみれば、これが「攻めの情報活動」です。
積極的にアクセスして情報を取ってくることによって、効率よく相手を捕まえたり、現場を押さえたりできるわけですが、こうした「攻めの情報活動」に欠けているのが、日本の欠点といえるでしょう。
それというのも、アメリカならCIA、イギリスならMI6といった対外情報局が、現在の日本にないのが大きな問題なのです。
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